2019年07月18日

錨と錨鎖の話し (13・補)


折角ですから、現役の時の思い出を。

(12) でもご説明したとおり、私の場合は、最初の抑止では錨を “絶対に” 引っ張らないように注意し、かつ錨鎖が団子にならなようにこれをできるだけ真っ直ぐ伸ばすことに決めておりました。

要するに、錨と錨鎖の重量とそれによる海底との摩擦抵抗を期待するのです。

そのために重要なのが “天候予察” です。 則ち、台風の接近に伴う風向・風力とその変化の見積もり、それによる錨地の周りの状況 (地形) による風向・風速とその変化の見積もり、錨地の潮の干満による海流の強さと方向、これと風向・風速の見積もりとの関係、とくに艦の振れ回りへの影響などなどです。

航海長、船務長、気象長を集めてこれらを綿密に分析し、その結果により投錨時の錨鎖の伸出方向と錨鎖長を決めます。

この 錨鎖の伸出方向と錨鎖長の善し悪しが台風避泊における錨泊で最も大切なこと なのです。


ある時、台風の接近に伴い佐世保の恵比寿湾に避泊した時のことです。

Ebisuwan_sat_R01_01_m.jpg
( 元画像 : Google Earth より)

避泊し終わって暫くしてから、総監部から連絡が入りました。

なぜ私の艦 “だけが” 錨鎖伸出方向が他の艦艇と大きく異なるのか、それで良いのか? とのことです。

私が直接電話に出て上記のことを説明して、これで間違いない、と。

で、結果はどうなったか?

予察どおり夜半にかなり強い風が吹きまして、翌朝台風が過ぎ去った時、それは見事なまでに他の艦艇のほぼ全てが、多かれ少なかれ走錨したり錨位が動いてしまったりしていましたが、私の艦だけはピクリともしていません (^_^)


現役の時、何隻か前甲板指揮官 (=錨作業指揮官) をやりましたが、台風避泊で走錨したり錨位がずれたりしたことは一度もありません。 これには自信を持っています (と言っても船乗りなら本来当たり前のことなんですが)。

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前 : 「 錨と錨鎖の話し (13)」

次 : 「 錨と錨鎖の話し (13・補2)」

posted by 桜と錨 at 12:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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