2018年09月18日

旧海軍の砲の砲身型について


旧海軍では、砲の呼称については大正2年になって内令兵第11号 『砲熕名称付与法』 により初めて統一されたものが規定されました。

そしてこれは大正6年に内令兵第16号 『砲名称付与法』 として多少の変更がなされましたが、大正15年に一旦廃止され、同年に官房機密をもって 『兵器名称付与標準』 として砲のみならず兵器全般の名称付与法の統一が図られました。

しかしながら、この付与標準では細かなところまでは規定されていないため、これのみでは不完全・不十分であることから、昭和14年になって内令兵52号 『砲の名称』 によってその名称付与法の細部が追加規定されたのです。

この内令兵によって砲の名称は 「一般呼称」 を基本とし、必要に応じてこれに更に 「補助又は区別語」 を付加することとされました。

例えば 「四十五口径四一式三十六糎砲」 というのが一般呼称で、口径長、尾栓式、口径の順で表します。

そしてこの一般呼称に、嚢砲・莢砲の別、構造、製造方法、内筒換装を区別表示する必要がある場合に、それぞれ必要な補助又は区別語を付加することになります。

例えば次のようにです。

IJN_Gun_Naming_S14_01_s.JPG

この砲身型は砲身の製造を発注する場合とか、発射成績を記録するような場合に、その砲の砲身を明らかにする必要が出てきます。

これは砲身型についてですが、その他に単装・連装などの区分によるものや、砲架の種類によるものなどの明示方法が細かく規定されています。

そしてこれらは各艦に備え付ける 「兵器簿」 には、「兵器」 の欄に一般呼称を、そして 「砲身及び砲架」 の欄に一般呼称と補助又は区別語によるものを記載することになっています。

ただし、この 「補助及び区別語」 というのはあくまでも砲身型などを明示をする “必要がある場合” のものということで、単に砲の名称と言えば一般呼称が正式なものとなります。

したがって、ネットの某所で出た

日本海軍の艦載砲は末尾にローマ数字で〜型とつけますが (後略)

というのは砲身型のことであって、砲の名称たる一般呼称のことではありません。

ですから、これは素直に

六十口径十五糎五砲の砲身型にはどのようなものがありますか?

というようにしたならばスッキリして、回答する側にもスンナリ理解できたでしょうね。


ちなみに、この六十口径十五糎五砲の砲身型は hush 氏の回答にもあったとおり 「T型」 一つのみですが (^_^)


なお付け加えるならば、この砲身型は砲弾の種類や使用する発射薬が変わって弾室・薬室の形状などが改良された場合や、砲身の製造方法の改善がなされたりして新しい砲身が製造された場合に新たな砲身型が付与されます。

つまり砲身型によって筒内弾道は多少 (射表に基づく修正程度) は異なってくる場合がありますが、砲としての基本的な性能は変わりません。

したがって、搭載艦が異なるからといって、何か特別の理由がない限り、それだけではそれに伴って “必然的に” 砲身型が変わるというものではないということです。

また、砲は砲身の命数が尽きると新しいものと交換されますが、その時に改良・改善がなされた新しい砲身型のものになる場合もありますし、在庫の予備砲身があればそれが使われることもあります。

ですから、連装砲塔で左右砲の砲身型が異なることも場合によっては当然出てくることになります。

これを要するに、砲身型というのは “砲種” と言う意味とは異なるということに注意が必要です。

posted by 桜と錨 at 18:36| Comment(3) | TrackBack(0) | 砲術の話し
この記事へのコメント
なるほど、そういうものなんですね。
勉強になりました。
ありがとうございます。
Posted by Mk.63 GFCS at 2018年09月18日 19:22
砲熕名称付与の中でカッコ内の文字と意味は何を示しているのか教えてください。(正○)(加○)(復○)の中の○です。手元の漢和辞典で調べましてが読み方もわかりませんでした。
Posted by 横尾昌幸 at 2018年09月27日 14:48
横尾昌幸さん

○は 「壓」、「圧」 の旧字体ですね。

正圧、加圧などの意味については、その他の語を含めて昭和14年内令兵52号 『砲の名称』をご覧いただくのがよろしいでしょう。 今ではアジ歴でも公開されていますので。

ただし、いずれも専門用語ですから、砲身の構造をご存じないとちょっと難しいところがあるかもしれません。

Posted by 桜と錨 at 2018年09月27日 20:55
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