2018年08月26日

「大和」 型主砲塔バーベットの疑問 (3)


最後は疑問と言うより私の見解です。

前2回で「大和」型主砲塔のバーベットと円形支基についてお話ししたところです。 そして 「大和」 でも 「武蔵」 でも、それぞれの潜水調査によって主砲のバーベットとその内側にある円形支基が綺麗に残っていることが判明しています。

さてこれはどういうことを意味しているのでしょうか?


そうです、まさに砲塔内側からの衝撃は無かった、即ち徹甲弾や装薬の爆発 (完爆、完全爆発) は無かったことを示しています。

そもそも、装甲というのは外からの衝撃に対して堪えられるような構造で取り付けられており、基本的に内側からの衝撃に堪えることを念頭において作られていないからです。


そして連載冒頭に示した 「大和」 型主砲塔の構造図をもう一度ご覧下さい。

46cm_Trt_Draw_01_mod.jpg

これでお判りのように、赤線で示した砲室から下部給弾室旋動部までの砲塔旋回部の全重量は円形支基のローラーパスにかかっています。 つまり、砲塔旋回部は上からここに乗っているだけなのです。

したがって、戦闘被害によって浮力を失ない船体が傾いた時、横倒し近くになった時には砲室及び旋回盤の重量によってこの部分から外れ、また一挙に転覆して逆さまになると、旋回部全体がスッポリとぬけてしまいます。

( 船体の浮力が失われた時には船体は横転又は転覆しますが、これについてはご説明の必要はないものと思います。)

例えば 「武蔵」 の場合は沈没前に暫く横倒し近くになっており、この時に砲室及び旋回盤が抜け落ちたことは生存者の証言及び記録などから明らかです。

当然ながら、砲室と旋回盤がその重量によって外れる時には、その下にある給弾室などの連結部や揚弾・揚薬機、電纜などを引きちぎることになります。

そして次に、沈没し転覆した時に残りの上部給弾室以下が抜け落ちることになります。


まさに 「大和」 でも 「武蔵」 でも、残された砲塔旋回部の各部とバーベット及び円形支基の映像はこのことを証明しています。

もし砲塔旋回部が抜けていない状態で徹甲弾や隣接する火薬庫の装薬が完爆するようなら、このような状態では決して残りません。


したがって、一部ではこの給弾室や給薬室の残骸が砲弾薬の爆発による姿だとしているものがありますが、これは誤りです。

両艦の潜水調査の映像を見ても、バーベットと円形支基が綺麗に残っていることに加え、砲塔旋回部の各部の残骸には爆発痕は全く見当たりませんし、誘爆を起こしたとする火災の跡なども全く見られません。

あの姿のどこをとったら爆発したと見えるのでしょう?


もちろん、もし徹甲弾が炸裂したのであれば、とてもこの程度のことでは済むものではありません。 それこそ艦が粉々になって爆沈してしまいます。

それに砲弾の炸裂の原因として、横倒しになった時の衝撃によるだの、火災による引火だのと言われていますが、とんでもありません。

そもそも徹甲弾がその程度で炸裂するようなものであるならば、船乗りは危なくてとても使い物になりません。

ゆっくり横倒しになるよりも、荒天時の動揺による衝撃のものの方が遙かに激しいものです。

一体全体、古今東西の海軍においてこの程度のことで主砲弾が炸裂したなどという事例がいくつあるというのでしょうか?

また、主砲の装薬の爆発 (完爆、完全爆発) もあり得ません。 「大和」 と 「武蔵」 の沈没時の状況及び生存者の証言からは、沈没前に主砲火薬庫の爆発があったとはされていません。

( 「大和」 では沈没直前に副砲火薬庫 (及びその周囲の高角砲や機銃弾火薬庫) で火災の引火による爆発があったとされ、その映像は米軍機からも撮影されてるところです。)

とすると、仮に水中で主砲の装薬が何らかの爆発があったとしても、それは不完爆 (不完全爆発) でしかありません。

水中で火薬庫内に海水も入らず装薬が完爆したとすると大変な衝撃波となり、海面に浮いている生存者達は無事では済まされません。

実際 「大和」 でも 「武蔵」 でも沈没後は水中で爆発は小さなものがあったことが知られているだけです。


では何故 「大和」 も 「武蔵」 も主砲塔付近で、船体が折れているのか? それも前部のみでなく後部も。

実はここに旧海軍技術 (造船) 士官達が誰も語ろうとしなかった 「大和」 型設計上の最大の問題点があるのです。

( 松本喜太郎氏は薄々気がついていたようなフシもありますが ・・・・ )

これについては項を改めてお話しすることにします。

(この項終わり)

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前 : 「 「大和」 型主砲塔バーベットの疑問 (2) 」

posted by 桜と錨 at 12:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し
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