2018年07月05日

方位と距離の呼称法 (補)


見張の場合の方位及び距離についての基本の呼称法については既にご説明したとおりですが、昔輸送艦の見張員をやっていたという方から次のようなコメントをいただきました。

見張り報告で80(やーまる)とか普通に使ってましたよ? 視界内に入ってきたフネを報告する際に100m1単位でやってました

根拠と言われても「当時そういう報告の仕方を教わって見張り員配置の時にそのままやっていた」としか言いようがありませんが。


先の説明ではあまり細かいことや例外的なことまで言及すると本題の主旨から離れますし、煩雑になりますので、方位や距離の呼称法について “艦橋内でも様々な種類、場合、状況がありますね” ということに止めました。

折角ですから、この海上自衛隊における場合について補足として少しお話しすることとします。


見張の報告における方位及び距離の呼称法については、報告を受ける者が即座かつ直感的に理解できるように、艦首を基準とする左右180度までの相対方位と、目測による大凡の距離をメートル単位で行うのが旧海軍からの基本です。

( ちなみに、いただいたコメントの中にある 「相対角」 というのは旧海軍・海上自衛隊の用語にはありません。 また “見張りの報告” を 「口語」 という言い方もしません。)

もちろん方位にしても距離にしても迅速に目標などの状況を報告するために、羅針儀や測距儀などによる正確な測定ではなく、目で見たところをそのまま伝えるわけです。

ですから、「(距離) 8千」 と言っても極めて “アバウト” なものであることは申し上げるまでもありません。 このため航海科員や見張に付く他科乗員も、出来るだけ正確に目測する練度が要求され、その訓練が重視されていました。

そしてこれには、測距・測的系統や砲戦などにおける正確な方位・距離と明確に区別するための呼称法が定められていたのです。

もちろん旧海軍時代には、伝達は直接の口頭又は専用の伝声管を使用し、測距・測的系統などのものとは区別されていたわけです。

これは戦後に海上警備隊・海上自衛隊になっても基本は同じでした。

ところが、艦橋内 (特に国産艦艇が揃い始めてから) での方位・距離の使用については既にお話ししたとおり、様々な用途や状況でのものがありますので、旧海軍からのものとは見張の報告要領なども多少変化を必要とするようになりました。

その大きな切っ掛けは主として次の2つです。

1.伝声管は補助用として装備されるだけとなり、米軍式の無電池電話 (SP) 系統の一つである JL (見張) 系が主用され、これに CIC も組み込まれており、この CIC の充実と共に見張員にもレーダーによる正確な方位・距離情報が入るようになったこと。

2.測距・測的用の専用の測距儀が装備されなくなり、これに替わって艦橋内に65式66測距儀(基線長66センチ)が常備され、航海科員により手軽に使用されるようになったこと。

これらによって、見張による距離の報告も艦橋内での煩雑さを避ける意味もあって、次第に百メートル単位での呼称法が使われることが多くなってきました。

私の記憶では、確か昭和50年代に入ってからの頃であったと思います。 この頃には当直士官教育でもこれによるところが出てきたはずです。

しかしながら、いずれにしても見張における本来の基本は変わることはありませんが、艦艇における装備の現状による実用上のこととして、艦橋内でのことも次第に変化していくことはあり得ることです。

つまり船乗りが一般的に言うところの “応用動作” の一つですね。

ただし、今現在の海自の 「見張教範」 の記述がこの方式に変更されたのかどうかは寡聞にして知りません。

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前記事 : 「 方位と距離の呼称法 」


posted by 桜と錨 at 19:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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