2018年01月04日

旧海軍の昇任規定


ネットで旧海軍の昇任についてのことが話題になっていました。 次のような質問についてです。

日本海軍の昇進に関する規定はどうなっていたか?
この階級になるには何年間勤務していないといけない、こういう役職を経験していなければならない、という決まりはあったのか?
あったとすればどういうものか?

色々回答がついていたようですが、まあ某所はそういうところですので、それはそれで構いませんし、何より質問した人がそれで納得してしまいました ・・・・ ですが、結局のところ最も肝心なことは出てきませんでした。


旧海軍における (と言っても別に旧海軍だけのことではありませんが) 昇任については次の2つに分けて考える必要があります。

 1.昇任選考の前提となる候補者名簿の作成
 2.名簿に基づく人事上の選考作業

上記の元々の質問は、この内の1.がどうなっていたのかということでしょう (多分)。

これについては昭和期の旧海軍では次の規則類が基本となっています。

  「海軍武官進級令」 (大正9年 勅令58号)
  「海軍武官任用進級取扱規則」 (大正8年 達133号)
  「海軍兵進級規則」 (大正9年 達80号)

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( 「海軍諸例則」 第14版より進級令の1頁目 )

これには別に色々な特例事項等がありますが、ともかくこの規則類に従って候補者名簿に載らない限り選考の土俵に上がりません。

ただしハッキリしているのはここまでであり、後は具体的な各個人の昇任履歴を見る以外にはありません。


そこで、2.の候補者名簿に基づき進級会議において選考が行われるわけですが、ではどの様な要素によってこの名簿上の順番が決まって来るのかということになります。

海軍士官の場合は海軍省の人事局第1課における各担当者の作業になります。 当然ながら事務的な要素、例えば現階級経過年数、任用別・期別、経歴、勤務成績、賞罰・功績など様々な事項が考慮されて名簿の順番が決まってきます。 HN 「hush」 氏の回答でも出てきた 「海軍人事取扱内規」 はこの昇任を含む人事担当者の作業要領です。

そして重要なことは、進級会議においてこの候補者名簿に基づいて選考されますが、その際に単純に名簿順に沿って決まってくるわけではありません。 しかも、その時その時の会議でどの様にこの名簿の中から選ばれたかについては決して表に出ることはない、と言うことです。

これは海軍士官の場合、例えば昇任すべき上位階級での職の要求といものがあります。 いくら人事担当者による作成名簿の上位にあっても、空きのある昇任後の配置に適さないことも当然あり得るわけです。

そして肝心なことは、選考者達の個人としての意見が入ることです。 これには選考者個人によるいわゆる “引き” があります。 また旧海軍における人事上の人脈、即ち “閥” が含まれており、被選考者は自分が知らず知らずの間にこの閥の中に組み込まれて行くことになります。 特に上位階級になるほどこれが大きく影響してきます。 このことは昇任だけではなく、補職についても同様です。


以上の全てのことにより実際の進級者がその進級順位と共に決定されますが、先にも申し上げましたとおり、最初の候補者名簿作成以外のことは、昇任選考理由などが表に出ることはありません。

悪い言い方をすれば、要するに人事担当者と選考者それぞれによる胸先三寸 (胸三寸+舌先三寸) ということでもあるわけです。

posted by 桜と錨 at 14:22| Comment(3) | TrackBack(0) | 海軍のこと
この記事へのコメント
管理人の桜と錨です。

キャプ専クックさんよりコメントをいただきましたが、本記事に関することですので、こちらに移動させていただきます。

(ここから ↓)
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桜と錨様、こん××は。 遅まきながら、新年おめでとうございます。今年もよろしくご指導下さい。

前回の海軍昇進規定はおもしろく読ませていただきました。公務員の端くれとして 管理人さんの一言「要するに人事担当者と選考者それぞれによる胸先三寸 (胸三寸+舌先三寸) 」 については全く同感です(^_^;)

ところで、お示しいただいた規定は改正欄を見ると18年の数字が見えるので、戦時改訂の 行われた最終のものなのだと思われます。 そうするとこの規定の中で「上等下士官」とあるのは「兵曹長」のことでしょうか それとも「上等兵曹」のことでしょうか。 わたしにはよくわからないのでお教えいただければ幸いです。
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(ここまで ↑)

Posted by 桜と錨 at 2018年01月09日 12:17
キャプ専クックさん、こん**は。 今年もご愛顧の程よろしくお願いいたします。

>「上等下士官」とあるのは

本記事でご紹介した 「海軍武官進級令」 は昭和18年6月1日の勅令第474号による改正までを含んだものです。

そしてこれは昭和17年7月13日に改正され、同年11月1日から施行された 「海軍武官官階」 別表に合わされています。

進級というのは単に階級だけの問題ではなく、官職としての横並び (身分及び待遇) に関係するからです。

したがって、当該ページにある 「上等下士官」 は 「上等兵曹」、「一等下士官」 は 「一等兵曹」、「二等下士官」 は 「二等兵曹 」のことです。

なお、兵曹長は下士官ではなく 「准士官」 で、兵曹長から特務士官になるのは進級ではなく新たな任用になりますので、当該ページの進級に要する実役停年にはありません。

Posted by 桜と錨 at 2018年01月09日 13:13
桜と錨様、こん××は。

ありがとうございます、よくわかりました。

たたき上げの兵が士官になるのは進級ではなくて任用なのですか。
うーん、やはり兵が士官になるのは狭き門なのですね。
Posted by キャプ専クック at 2018年01月09日 21:51
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