2017年08月17日

拙稿 「アイオワ級の兵装」 の補足 (1)


「世界の艦船」 9月号増刊の 『米戦艦 「アイオワ」 級』 で、拙稿 「アイオワ級のメカニズム A 兵装」 において紙幅の関係などで盛り込めなかった事項などを少しずつ補足してみたいと思います。


その第1回目で、16インチ主砲塔の前面装甲厚についてです。

これについては、一般出版物などでは従来から17インチ+2.5インチの19.5インチ とされてきました。 例えば、ノーマン・フリードマン氏の 『U.S. Battleships: An Illustrated Design History」 においても

The original 18-inch face was replaced by 17-inch plate backed by 2.5 inch of STS to give the equivalent of single plate 18.75 inches thick.

としてこの2.5インチ厚のステンレス (STS) 鋼板を装甲に含めていました。

しかしながら、米海軍ではこのSTS鋼板は いわゆる “装甲” (Armor) とは考えておらず、その主目的である 「splinter plate」 として 装甲板 (armor plate) とは別の扱い としており、公式文書でもそのように記述されています。

編集部さんにご説明して、今回これを本来の 前面装甲厚17インチ としております。

次の図は米海軍の教範にあるものですが、残念ながら紙幅の関係で割愛せざるを得ませんでしたので、ここでご紹介します。

16in_Turret_Splinter_plate_01_s.JPG

なお、この装甲厚については、著名なサイト NavWeaps でも加筆修正がなされているようですね。

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(次) : 拙稿 「アイオワ級の兵装」 の補足 (2)

posted by 桜と錨 at 14:56| Comment(7) | TrackBack(0) | 砲術の話し
この記事へのコメント
なるほど、そうなのですね。
勉強になりました。

質問なのですが「U.S. Battleships: An Illustrated Design History」のp450に記載されているモンタナ級の砲塔の前面装甲厚「18in on 4.5in」の4.5inchの部分も装甲では無いと考えてよいのでしょうか?
Posted by Mk.63 GFCS at 2017年08月18日 01:06
Mk.63 GFCS さん

>4.5inchの部分も装甲では無い

はい、STS鋼板の Splinter Plate ですね。

「モンタナ」の主砲塔についての米海軍の資料は所持しておりませんので詳細は判りませんが、基本構造は「アイオワ」と同じと判断されます。

Posted by 桜と錨 at 2017年08月18日 11:45
はじめまして。
ネットを検索してから、この記事を読むました。

気になることがあって質問ですが主砲塔前面装甲の後にあるSplinter PlateのSTS鋼板は砲弾の防御で何の役割をしていないのですか?

主砲塔前面装甲を完全に貫通せずに爆発した破片を防いでくれること以外、他のことを期待するのは無理だと思ったらいいですか?

そしてコメントの作成ミスによる桜と錨さんに迷惑をかけて申し訳ありません。
Posted by 無名人 at 2017年12月02日 23:37
無名人さん、初めまして。

米海軍の Class A armor と Class B armor というのはご存じでしょうか?

そしてそもそも “装甲” という言葉は何を意味するかということになろうかと思います。

それをお考えいただければ、何故米海軍では砲塔の装甲厚にSTS鋼板が含まれないのかがご理解いただけるのではないでしょうか。

Posted by 桜と錨 at 2017年12月03日 13:39
AとBですね。はい知っています。

そして、STSは戦艦以外の主力艦で甲板装甲や小口径艦砲砲塔装甲に使われていることを知っています。しかし、主力艦の主砲塔装甲用途としては無理なので、破片防御だけが米海軍の期待か?

私の知識ではこれが限界ですね。鋼板について熱心に勉強します!
Posted by 無名人 at 2017年12月03日 23:37
無名人さん

“armor” というのを日本語の “装甲 (板)” と言ってしまうとちょっと誤解するおそれがあるでしょうね。 むしろ日本語では “防弾 (板)” の方が適当と思います。

米海軍が言う Class A armor と Class B armor もその意味では “防弾 (板)” であり、そのうち Class A が敵弾貫通を阻止するためのいわゆる “装甲 (板)” になります。

当然ながら、両者ともその目的、用途、材質・性質が異なりますので、単に一言で “装甲 (板)” として一緒にはできません。

そして主砲塔砲室は “敵弾貫通阻止のための装甲” ですので、Class A がその “装甲厚” となります。

もちろんSTS鋼板でも全くその効果が無いわけではなく、この方面の著名な研究家である Nathan Okun 氏などもその能力を計算して合算していましたが、現在ではやっと米海軍の意図が理解されたのか、文字通りの “Splinter Plate” として装甲厚には加えないことが一般的となりました。

これを言い出すと、例え10ミリ程度の船体外板であってもその効果は “0” ではありませんので、したがって “装甲厚” とは何を意味するかということになってきます。

ということで、アイオワ型の主砲塔砲室の前面装甲厚は、当時から米海軍のマニュアルなどの記載のとおりが正規です。 これは米海軍自身がそう言っていることですので。

もちろんこのSTS鋼板などは旧海軍では使用されておりませんが、これは装甲として役に立たないからというわけではなく、むしろ例え弾片防護用としての使用であったとしても、米海軍のようにこれを Splinter Plate として用いることなどは、いわばやりたくとも簡単にできなかった “贅沢品” であったといえるでしょう。

Posted by 桜と錨 at 2017年12月04日 17:50
勉強になりました。
ご回答ありがとうございます。
Posted by 無名人 at 2017年12月04日 20:25
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