2017年08月12日

「起工式」 「命名・進水式」 「竣工式」 (続)


軍艦に限らず、どの様な船であってもその建造に伴う標記の3つの儀式・行事には古今東西それぞれ伝統や慣習があり、いずれも大事なものであることは間違いありません。 旧海軍においても明治初期に英海軍式を参考にし、これに日本独自の方式を加えて発展させました。

特に進水式については、それまでの建造物から実際に 「船」 となって海上に浮かぶということから盛大に行われてきました。

しかしながらこれらはあくまでも 「船」 という物体、言い換えるとハードウェアについてのものであり、「造船」 という世界での話になります。

しかしながら、海軍の艦船となると必然的に海軍という “組織” としてのことが関係してきます。 つまり海軍という国のお役所の一つとしての必須事項です。

これが 「艦船籍」 です。 この 「艦船籍」 に登録されて始めて海軍に所属する艦船 であるということになります。 このうちの軍艦及び水雷艇等が登録されたものが 艦艇籍 です。 これより、当該艦艇のいわゆる “後方” を担当することになる 本籍 と、どの様な階級・技能を持った乗員を何名乗せるかという 定員(表) が決定されます。

では海軍が新規建造又は既存艦艇を購入した場合に、これらはいつこの艦艇籍に入るのでしょうか?

「艦艇籍」 に関連する事項を定めたのが 『新造軍艦水雷艇ノ帝国艦艇籍ニ入ル時期等ノ件』 (官房機密1434号 大正3年10月30日) です。

Kansenseki_hennyu_01_s.JPG

http://navgunschl2.sakura.ne.jp/IJN_houki/IJN_houki_main.html
http://navgunschl2.sakura.ne.jp/IJN_houki/PDF/T031130_kansensekihennyu.pdf

これは当初明治36年に 「海総機密158号」 として定められたものを改訂し、かつ水雷艇に関する事項を追加したもので、大正6年に多少の改正を経て太平洋戦争期まで続きました。

要約すると、

 新造計画決定 (=予算成立) 後の工事着手の時期:
   1.艦艇名を決定し艦艇類別等級表中に加える
   2.本籍及び定員を仮定
 命名日(=進水日):
   1.本籍及び定員を確定
   2.帝国海軍艦艇籍に編入
 竣工・授受日:
   1.在役艦又は第一予備艦とする
   2.国内外の造船所で建造する場合及び既成の軍艦等を購入する場合は、
     艦艇籍編入、本籍及び定員の確定。

つまり、艦艇籍に登録され、かつ本籍と定員が確定すると言うことは海軍という “組織” にとっては最も重要なことになります。

したがって、標記の3つの儀式のうちでは 「命名・進水式」 が最も盛大であり、海軍工廠以外の造船所で建造する場合も儀式としてはこれに準ずることになります。

艦艇籍に入ると言うことは、その日より建造計画番号などではなく正式に 「軍艦〇〇」 などとなり、艤装員以外の乗員は 「軍艦〇〇乗組」 となります。

命名・進水式以降艤装工事が進むにつれて定員(表) に基づく乗員が順次発令となりますが、ただしその中には艤装員を兼ねる者もいますが、乗員=艤装員ではない ことには注意が必要です。

そして本籍及び定員(表) が確定することにより、以後当該艦の特務士官以下の補職人事、整備、補給などは全て所管の鎮守府の責務となります。

また世間一般では、例えば同型艦の呼称問題について、本来の二番艦が一番艦より先に竣工したから云々、などということが見られますが、いつ竣工したか、ではなく、いつ艦艇籍に入ったか が問題なのです。

「同型艦」 ということについてはこの後で。

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(前) : 「起工式」 「命名・進水式」 「竣工式」

(次) : 「起工式」 「命名・進水式」 「竣工式」 (続2)

posted by 桜と錨 at 14:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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