2017年04月29日

米国による斬首作戦


またまた北朝鮮は性懲りもなく弾道ミサイルの実験を行ったが ・・・・

緊張を高める北朝鮮情勢について、ネット上でも米国による金正恩を狙った斬首作戦の実施が語られているところである。

先にも、米国の国益保護及びそれに影響を及ぼすことについては、米国はそれが例え他国の領土上であっても、必要があると判断した時は軍事力を行使することには躊躇しないことを書いた。

これには他国の権力者の殺害も含まれることは申し上げるまでもない。

この米国による斬首作戦は過去にも色々あるが、その最も代表的な例が1986年に 「リビアの暴れん坊」 と呼ばれた独裁者カダフィ大佐を狙った 「エルドラド・キャニオン作戦」 (Operation El Dorado Canyon)であろう。

既に30年も前のことであり、覚えておられない方も多いと思われるので、少しご紹介してみたい。


作戦実施に至る経緯については省略するが、85年に客船ハイジャック事件や空港における爆破事件2件などのテロに引き続き、西ベルリンでのディスコ爆破事件により米国市民に死者が出たことが直接の引金とされている。

この作戦は、1986年4月14日英国 Lakenheath 空軍基地駐留の第48戦術戦闘航空団のF-111F 24機と、Upper Heyford 基地駐留の第42電子戦航空隊の EF-111A 5機が飛び立ったことに始まる。

Tripoli_1986_01_s.jpg

リビアまでの飛行ルートはフランス上空を通過するのが早く、片道約1300マイルであったが、同国の承諾が得られなかったために大西洋をグルリと周り、ジブラルタル海峡を通って地中海に入る洋上ルートとなり、片道の飛行距離は約2500マイル、飛行時間13〜14時間となった。

このため事前に米本土から英国 Mildenhaii に進出した KC-10 19機及び Fairfor 駐留の KC-135 空中給油機9機の合計28機により、往路4回及び復路2回の計6回の給油を受けた。 この給油回数は、往路は低高度、復路はより高々度の巡航高度であったこともある。

なお、F-111F 24機の内6機は長距離作戦のための予備機であり、本隊と一緒に飛び立ったものの、第1回の空中給油の後英国の基地に引き返しており、実際の空襲を実施したのは18機であった。

目標はトリポリ周辺の次の3個所である。

  Al Azziziyah 駐屯地 : 海外テロ司令部があり、かつカダフィ大佐の居住地
  Sidi Bilal 港湾施設 : 海上テロ要員の訓練施設
  Tripori 空港 : 軍用輸送機基地としても使用

そしてリビア沖のシドラ湾には第6艦隊の空母 「アメリカ」 と 「コーラル・シー」 が展開し、空軍の空襲部隊に対する次の支援作戦を実施した。

  E-2C : 作戦空域の早期警戒と航空管制
  F-14 : 作戦空域のCAP
  EA-6B : EF-111A と共に電子戦支援、特にSAM砲台に対する電子妨害

加えて、空軍部隊のトリポリ空襲と同時並行して F/A-18 6機、A-6E 14機及び A-7E 6機により Benghazi 周辺の Al Jumahiriyah 駐屯地及び Benina 空軍基地、防空施設への空襲を実施した。

Tripoli_1986_02_s.jpg

この作戦において使用された主な攻撃兵器は、空軍の F-111F が 2,000lb 及び 500lb の Paveway 2 レーザー誘導爆弾であり、海軍の A-6E は 1,000lb の Mk82 Mod1 Snakeye 爆弾及び Mk20 Rocheye クラスター爆弾、A-7E は AGM-45 Shrike 及び AGM-88A HARM (High-speed Anti-Radiation Missile)、F/A-18 が HARM であったとされている。


この作戦の計画立案開始は4月7日とされており、これだけの規模の海空軍の共同作戦を僅か1週間で実行に移していることには注目していただきたい。 これが米軍の実力である。

しかも、英国はもちろん、フランス、ロシア、イタリアなどの関係各国政府には事前通報などが行われたが、関係者以外の世界各国がまさに寝耳に水、青天の霹靂の作戦であった。

そして作戦は完璧な奇襲であり、カダフィ大佐は運良く難を逃れたものの、養女を亡くしており(これは後日誤りであったとされた)、またトリポリ及びベンガジ周辺の目標地区の被害も甚大であった。

米側は F-111F 1機が未帰還となり、後に搭乗員2名の内の1名の遺体がリビア側から米国に引き渡されたとされている。

この空襲の後もリビアのテロ行為などはある程度続いたものの、この米国による斬首作戦により、「リビアの暴れん坊」 「狂犬」 と呼ばれたカダフィ大佐が次第に大人しくなり、かつ西側寄りになっていった直接の切っ掛けとなったことは事実である。


この様なまだ交戦下にない他国に対する米国による軍事力の行使は、その後の湾岸戦争劈頭のバクダッドに対して、そしてつい先日のシリアに対する大量巡航ミサイル攻撃の実施などをみてもその考え方がよく判るであろう。


そこで、最後に北朝鮮情勢である。

米国はその気になればこのリビア空襲程度の作戦はいとも簡単にやってのける実績を示しているのであり、しかもこのリビア空襲に比べれば、地理的かつ米側兵力の状況などははるかに容易であり有利である。

そして秘密保全は作戦の成否の鍵となるものであり、その事前の動静・徴候などがマスコミや評論家と称する人達に流れることはあり得ないことである。

まさに、ごく限られた関係者以外にとっては “ある日突然として” 実行されるのである。

もちろん政権中枢や主要軍事基地に対する空襲は、米国による軍事作戦上の一つの選択肢に過ぎないが、北朝鮮もその指導部の思考が “まとも” であるならば、このことは十分に理解しているであろうと考えるが ・・・・ ?

( 画像は当時の 「Aviation Week & Space Technology」 誌より引用 )
posted by 桜と錨 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
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