2016年11月25日

公職者等の序列について


軍や警察などの組織における職員の先後任順序、即ち序列については、これは階級とその進級日が基準となります。 そして軍においてはこれを基準にした士官名簿が作成されます。 この名簿に記載されている順番が序列です。

ただし、軍では指揮 (継承) 関係を明確にする必要から、例えば旧海軍の 「軍令承行令」 などの様な規則が定められますが、これはこの公的立場としての処遇である序列とは別の問題です。

( 余談になりますが、現在の米海軍でもどの様に階級が上でも Line Officer で無い限り、その他の職種の士官では作戦部隊の指揮官にはなれません。 例えば Supply Officer は海軍作戦部長や艦隊司令長官などになることはできません。 当然と言えば当然のことですが。)

では軍だけでなく官公庁や公的組織・機関と横並びになった場合はどうなっているのでしょうか?


太平洋戦争まではこの序列のことを一般的に 「席次」 と言いました。 つまり儀式などにおける参列の範囲や並ぶ時の順番を決めるための基を定めたもので、これが公的立場における処遇を典型的に示したものであるといえるでしょう。

その最も権威のあるものが 「宮中席次」 で、「皇室儀制令」 (大正15年皇室令第7号) の中で定められており、これは公職、爵位、叙位叙勲による優遇者の3つが基本となっています。

そしてこれに準じて公職者の席次を定めたものが 「高等官席次」 (明治25年内閣総理大臣通牒) です。

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( 画像は第8号の枢密院議長宛のもの、海軍大臣宛は第29号 元画像 : 国立公文書館所蔵史料より )

ではその席次において各組織・機関などの公職の横並びはどうやって決めているのかというと、これはズバリ “俸給額” が基準です。 つまり高い地位の人ほど俸給も高い、という考え方ですね。

この公職者の横並びの基準を定めたものが 「官等」 であり、特に幹部以上の等級を定めたものが 「高等官官等俸給令」 (明治43年勅令第134号) です。

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( 元画像 : 国立公文書館所蔵史料より )

この高等官官等俸給令において、「高等官」 を親任官及び第一〜第九等の高等官に分け、親任官の筆頭の内閣総理大臣から文部省直轄諸学校訓導に至る職名に応じた等級が第一〜第五表で示されております。

また、親任官及び高等官第一 ・ 第二等を 「勅任官」、第三〜第九等を 「奏任官」 と呼ぶこともこの勅令の中で定められています。


では、公職者だけではなく一般市民との横並びはどうなっているのかというと、これはありません。 確かに叙位叙勲による優遇者であれば宮中席次にはありますが、それ以外では定める必要性が無いからです。

例えば、民間会社の社長と海軍少尉とどちらが偉い (地位が高い) か、などということを、一般社会における公的な場の席次として予め決めて置かなければならないようなことはまずありません。

何かの機会に宴席や会議・式典などで同席する場合であっても、それはそれでその時その時の集まりの主旨に基づいた一般常識や社会通念、慣習などによって判断して決めれば良いことだからです。


したがって、先日ネット上の某所で軍人と民間人との地位と処遇について話題になった中でもありました、一般に良く言われる

階級を持たない者に対しては、極端にいえば、何をしてもよいという風潮があった

というのも、確かに昭和期の旧陸軍の一部において見られたようですが、これは多分に個々人やそのグループの問題であって、陸海軍の公式なものでも国家としての公的な立場のものでもありません。

そして

造船会社の社長が海軍の機関に呼ばれ、守衛に来意を伝えると、延々と寒天の中で待たされたという話が載っておりました。 つまり、守衛室に招き入れられることもなかったわけです。 これは、軍人が一番偉く、一兵卒であっても、会社の社長よりも偉いという意識が働いたものでしょう。

と言うようなことも、これは単に “自分は社長なのに” という自意識の上でその様に思ったのでしょう。 私から言わせれば、そのような反応の方がおかしいと思いまね。

一般に通じるそれなりの肩書きをもった人が公式訪問 (単に呼ばれたから行ったというのは非公式訪問です) する場合などでない限り、海軍として一般の人々に対する応接や礼式などの規定はありません。

と言うかそのようなことを想定した組織ではありませんので、例え一兵卒であっても門衛としては海軍の規則に従わざるをえませんし、ましてや会社の社長などの様な人でも少なくとも徴兵の経験はあるでしょうから、その様な軍のことは当然理解できているはずです。

そして、公式訪問以外での一般の人々の通常の来訪に対して、衛門を含めてどの様な対応・接遇をとるかは、その基地・施設の指揮官の裁量の範囲内のことと言えます。

もちろん裁量の範囲と言っても、それは当時の日本社会全体における風習や慣習の中でのことですので、現在の感覚で単純に比較してあれこれ指摘しても意味はないことは申し上げるまでもありません。

この様なことは現在の一般社会でも似たようなものではないでしょうか? もし仮に私が現役時代に、非公式かつ事前アポなしでいきなり大企業や官公庁などの受付に行って来意を告げたとしても、大同小異のことでしょう。

もちろん現在の企業などの訪問者に対する受付の対応は “企業イメージ” を大切にしますので、昔と違って相当に良くなっているでしょうが。

いずれにしても、これら一般的な訪問時の対応・接遇などのことと、今回の主題である公的な立場における処遇としての席次・順位のこととは、全く次元の異なる話しということになります。

posted by 桜と錨 at 21:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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