2016年11月20日

駆水頭部について


所要があって旧海軍の史料を整理していた時に、先日ネットのどこだったかで魚雷の駆水頭部(訓練弾頭)のことが話題になっていたことを思い出しました。

ついでですから、この機会にこの駆水頭部について少しご紹介を。

当然のことながら、平時の魚雷発射訓練では炸薬の詰まった実用頭部をそのまま使うわけにはいきませんので、爆発しない訓練弾頭が必要になります。

旧海軍では、明治期から既にこの訓練弾頭の必要性により、当初は薄い鋼板製頭部の中に炸薬の代わりの鉛などの錘をいれて実用頭部との重量を合わせたものを使用しました。 これを 「演習頭部」 といいます。

続いて標的艦の艦体に衝突させ、その命中の有無を確認できるようにした 「衝突頭部」 が開発されました。

その後両者それぞれで一層の改善が加えられましたが、大正4年になって英国から演習兼衝突頭部が導入され、これを元に改良が図られることになりました。

しかしながら、艦隊側からは更なる実戦的な訓練に使用するため、魚雷の沈没・失踪を防ぐより高度な機能を有するものの要求が強くなり、このため大正9年になって魚雷の航走終了後又は標的艦衝突後に魚雷頭部の中の水を抜いて軽くして海面に浮くようにしたものが開発され、翌10年から艦隊での使用が始まりました。 これが 「駆水頭部」 です。

この昭和4年頃までの経緯などについては、本家サイトの水雷講堂コーナーで公開している旧海軍の公式文書『海軍水雷術史』の中でご紹介しておりますので、詳細はそちらをご参照ください。


そしてこの駆水頭部は、海面に浮いた時に着色の発煙を出したり、ライトを点灯したり、あるいは発射時からのデータを記録する装置を付加したりするなどの改善が図られ、昭和10年頃以降太平洋戦争期にはそれまでの「駆水頭部改二」に換わり 「駆水頭部二型」 が使用されています。

もちろんこの時期でも艦艇用の魚雷は53センチ径と61センチ径のものがありましたので、前者用の 「八九式二型駆水頭部」 と後者用の 「九〇式二型駆水頭部」 の2種類がありますが、径が異なるために内部のレイアウトが少し違うものの、基本的な機能・構造は両者ともほぼ同じになっています。

Kusuitoubu_Type89_model2_draw_01.jpg
( 八九式二型駆水頭部構造図 )

Kusuitoubu_Type90_model2_draw_01.jpg
( 九〇式二型駆水頭部構造図 )


因みに、頭部先端にある鈎状のものが 「衝突尖」、その後ろ側内部の筒状のものが 「水圧筒」 で、衝突又は航走終了により頭部内の水を排出する弁を作働させるためのものです。

posted by 桜と錨 at 23:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 海軍のこと
この記事へのコメント
誠に恥ずかしい事ですが、貴兄のHPを読み駆水頭部という文字を見るまでは「駆水頭部」はクスイトーブという演習用魚雷の名前だと勝手に思い込んでおりました。
失礼いたしました。
Posted by killy at 2016年11月21日 09:54
killy さん

確かに海軍部内の専門用語には、一般の方々にとっては分かり難いものがありますね。

Posted by 桜と錨 at 2016年11月23日 00:03
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