2016年09月05日

将旗と長旗 ・ 続


艦長が海軍少将である (に進級した) 場合、その艦に掲げる指揮官旗は何であるかをお尋ねしました。


皆さんから回答をいただいたとおり 「長旗」 で正解です。

旧海軍の場合は 「海軍旗章令」 (昭和7年勅令359号) で次の様に規定されているとおりで、


第十九條 将旗は指揮権を有する海軍大将、海軍中将又は海軍少将の旗章とし海上勤務の司令長官又は司令官に在りては其の座乗する艦船に、・・・ (以下略)

第二十一条 代将旗は司令官たる海軍大佐の旗章とし ・・・ (以下略)

第二十四条 長旗は各艦船を指揮する海軍将校の旗章とし ・・・ (以下略)

したがって、海軍少将といえども艦長は長旗を掲げなければなりません。

でもこれ、その筋では結構有名な方でも間違えておられました。 突然 “海軍少将の艦長なら少将旗でななければ” と言い出されてビックリしたことがあります (^_^;


では、人事規則上海軍少将が艦長となり得るのか、ということです。

ご存じのとおり、艦長に配置される者の階級はその艦の 「定員表」 で定められています。 先の例で言いますと 「武蔵」 の場合は海軍大佐です。

また海軍の伝統と慣習から、将官の階級に対する処遇として、大佐から少将に進級した場合はその進級と同時にしかるべき配置に補職替えとなるのが普通です。

この定員表に定められた階級については、「海軍定員令」 (大正2年内令34号) により

第十条 必要に応じ海軍定員及び補欠員の範囲内に於いて一時本令別表に依る各定員表所定の官職階に依ることなく配員することを得 但し上級者を以て下級の位置に充てるはやむを得ざる場合に限る

として定員表に定める階級より下位者を補職することは出来ますが、上位者を充てることは余程のことが無い限り (例えば国外派遣中の艦艇で死亡した場合のその交代など) できませんでした。

しかしながら戦時ともなるとそうも言っておれなくなり、その一つとして昭和13年には内令899号により、大東亜戦争中は戦艦及び航空母艦の艦長は一時少将を充てることができるとされたのです。

更にこれは、昭和19年の内令592号により、大尉以上少将までは全ての定員において一階級上の者を充て得るように改正されました。

S19_nairei_592_s.jpg

S19_nairei_592a_s.jpg

したがって、猪口敏平大佐の場合途中で少将に進級してもそのまま 「武蔵」 艦長であることは旧海軍の人事規則上は問題なかったのです。

とはいっても、もちろんこれは戦時における特例中の特例であり、古今東西の海軍でも極めて異例なものであったことは間違いありません。

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「将旗と長旗」 :


posted by 桜と錨 at 21:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 海軍のこと
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