2016年05月09日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (10・終)


弾道の誤差 (承前)

(3) 速力誤差

ここでいう 「速力」 とは speed、つまり単に早さのことで、方向の要素を含んだ速度 vector のことではありませんのでご注意を。

推進ロケット燃焼終了時における弾道弾の速力の誤差もまた弾着の誤差になることはお判りでしょう。

この速力誤差が生ずると、その後の真空中における楕円軌道が変わり、下図に示すように意図した軌道から長軸を誤差による Δθだけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には2Δθの誤差を生じることになります。

BM_Error_07a.jpg

このことは弾道の “高い” “低い” ということと同じ意味になり、これは次の (4) で説明する仰角誤差よりも更に重要な問題となります。


(4) 仰角誤差

推進ロケット燃焼終了時における弾道の仰角の誤差も弾着時の距離誤差となります。

これも上記の(3)と同じく、意図した軌道から長軸を誤差による Δθ だけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には 2Δθ の誤差を生じることになります。

BM_Error_07b.jpg

ただし、当初の意図した弾道は所要の射程まで飛翔するに要する最少のエネルギーによるものですから、この仰角誤差は結果的に常に射程の減少となって現れることになります。


弾道誤差の要約

これまでに説明してきた弾道弾の弾道誤差について、一言で言うと、第一段階の推力飛翔において誘導システムはこれらの誤差を補正する、あるいは最小限に抑えるように機能しなければならない、と言うことに尽きます。

つまり、弾道弾が所要の目標範囲内に弾着するためには、推進ロケット燃焼終了時の速度ベクトルを極めて精密にコントロールして、所望の弾道軌跡での飛翔を達成できる必要があると言うことです。

一般的な弾道弾において要求される推進ロケット燃焼終了時の各要素の精度は下表のとおりであり、これを達成し得て初めて99.9%の有効性が発揮可能とされています。

誤差要素要求精度
位置誤差 1/2マイル以下
方位誤差 ±1分以下
速力誤差 1〜2フィート/秒以下
仰角誤差 ±1分以下



地球自転の影響

さて、弾道弾の飛翔技術の基礎について説明してきましたが、最後にもう一つ重要な事項が残っています。

そうです、地球自転の影響の問題です。 射程が長く、飛行秒時も長いので、この問題への対応は弾道弾の飛翔技術としては必須のことです。

しかしながら、この地球自転の影響の問題は既に艦砲射撃の場合について本家サイトの『砲術の話題あれこれ 第7話』として採り上げております。


射表などの細かいことを除けば、基本的な理論については同じですのでそちらをご参照いただくとして、本項では省略することといたしますのでご了承下さい。


終わりに

さる2月に北朝鮮が行った弾道弾発射実験についての報道を機にこの項を進めてきましたが、ここにきて北朝鮮はSLBMやムスダンなど立て続けに打ち上げ実験を行い、そしてそのほぼ全てで失敗しております。

弾道のことや弾頭の再突入のこと以前に、技術的にはまだまだ打ち上げの初期段階さえ満足に完成していない状態であることが判明しました。

米国本土どころか、日本にとっても真の脅威となるような本当の弾道弾の完成はまだ当分先のように思われます。

もちろん連載冒頭に書きましたように、どこに飛んでいくのかわからない、本当に核弾頭の小型化に成功しているのかも判らない、という状況での単なる政治的なプロパガンダやブラフとしては別の話ですが ・・・・

(この項終わり)

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前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)

posted by 桜と錨 at 13:58| Comment(1) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
この記事へのコメント
管理人の桜と錨です。

HN 「水兵」 さんからお尋ねをいただきましたが、本ページではなく、本家サイトの内容についてのことでしたので、本家サイトの掲示板へ移動してお返事させていただきました。

     http://6623.teacup.com/navgunschl/bbs

Posted by 桜と錨 at 2016年05月10日 12:15
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