2016年05月07日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (8)


弾道の誤差

しばらく時間が開いてしまいましたが、今回はいよいよ弾道弾の飛翔の誤差、即ち弾道誤差の問題です。 この弾道の誤差はそのまま弾着の誤差に直結することは申し上げるまでもありません。

そして弾道弾が正確に所望の弾道を飛翔するかどうかは、ひとえにその誘導システムの良否にかかってきます。

飛翔第一段階のロケット推進の間に、誘導システムは推進ロケットの燃焼終了時点において弾道弾の速力と方向が所望の速度ベクトルとなるようにコントロールします。

この時に誘導システムが正しく機能しなければ、以後の飛翔において弾道弾の速度ベクトルに次の一つ、あるいはそれ以上の要素の不良を生じることになります。

   方位誤差
   位置誤差
   速力誤差
   仰角誤差

当然のことながら、第二段階の自由飛翔においてはこの燃焼終了時点での速度ベクトルの誤差の全てを引き継ぐことになりますが、この段階中に新たな誤差を生じることはありません、

最後の第三段階の大気圏再突入においては、弾道弾は大気の風及び空気密度の変化によって誤差を生じますが、基本的に (GPS等による誘導機能を有しない限り) これらの再突入時の誤差を修正することはできません。

そして風及び空気密度の変化による弾着誤差は一般的に約1マイル程度以内であるとされています。


(1)方位誤差

方位誤差は、燃焼終了時の速度ベクトル V が意図する弾道軌道面上から外れることにより生じる誤差です。

この誤差は、結果として下図に示すように予期弾着点に対して横方向の距離誤差となって現れることになります。

BM_Error_01.jpg

もちろん地球は平面ではありませんから問題はもう少しややこしく、球面三角法によってこの誤差の方程式を求めると次のようになります。

 a = A x sin 2θ

  a : 横方向距離誤差 (Cross Range Error) (単位 : マイル)
  A : 方位誤差 (単位 : 分)
  θ : 燃焼終了時の本来の弾道方位 (単位:度)

次の図は、この方程式により計算された弾着誤差の一例です。

BM_Error_02.jpg

この方程式によりいくつかの方位誤差について作図すると下図のようになります。

BM_Error_03.jpg

ここで注意していただきたいのは、射程5500マイルのICBMの場合、1度の方位誤差では60マイルの弾着誤差を生じますが、10800マイル (地球周回の約半分) の射程の場合は弾着誤差は0 (ゼロ) になることです。

これは本来の弾道弾の軌跡と誤差による軌跡は共に地球中心を含む垂直面内にあり、地球の大圏の円を横切ることになるためです。

( これは、例えば1/4や1/8などで切り売りされているスイカなどの皮の表面の形を考えていただければこの理屈がお判りになると思います。)

そしてこの図から、弾着時の誤差を1マイル程度とするためには、誘導システムは燃焼終了時の速度ベクトルにおいて方位誤差を ±1分の精度でコントロールする必要があることが判ります。

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前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (7)

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posted by 桜と錨 at 12:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
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