2016年04月02日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (5)


2.大気圏再突入段階 (Re-entry Phase)(続)

(2)再突入弾道の決定

本連載では説明を平易にするため数式などは極力使わない方針ですが、この項だけは少し。 ただし簡単なものですし、読み流していただいても構いません。

といいますのも、既にお話ししたように再突入によって急激な空気抵抗を受けますので弾道の軌跡がどのようになるかを求めなければ、この段階において弾道弾がどれくらいの距離を飛翔するのかが分かりません。

これは即ち、肝心な弾道弾の発射から弾着までの射程が正確に決められないということになります。

このため再突入体の運動についての方程式を求めることが必要になります。 とは言っても弾道弾の具体的な実際の例を挙げての詳細な説明では頭が痛くなるでしょうから、ここでは一般論としてごく簡単に。


再突入体はその頭部を文字通り頭にして飛翔し、かつピッチ (縦動揺) 及びロール (横動揺) を無視できるような形状に設計します。

これにより、再突入体は弾道に対して小さな迎角を維持するものと仮定することができますから、高速の再突入体に働く外力は重力と空気抵抗がその大部分となります。

ここで、とりあえずは地球は自転していないものと仮定し、そして弾道軌跡の完全な解析には含まれるべき副次的な要素は全て無視して考えることにします。

すると、容積 m、速力 V の再突入体について、弾道軌跡方向の運動方程式は次のように表されます。

BM_re-entry_form_01.jpg

ここで、

    ψ : 再突入体の弾軸(縦)方向と水平面とのなす角
    ρ : 空気密度
    A : 再突入体の有効弾面積
    C : 再突入体の抵抗係数

そして、弾道軌跡に対して直角方向の運動方程式は、次のようになります。

BM_re-entry_form_02.jpg

ここで、

    C : 再突入体の揚力係数

再突入の最初の姿勢再変換の段階では弾体の速度はまだ空気密度は小さく、かつ弾体は極めて高速ですので、この段階での飛翔軌跡は直線と見なすことができます。

また、次の減速段階でも再突入体の迎角 (ψ) は小さいので、上の方程式中の右辺の揚力の項はゼロに近くなりますので、この方程式は次のように表すことが可能です。

BM_re-entry_form_03.jpg

これらのことから、再突入の3段階のうち、初めの2つの間、再突入体の飛翔軌跡は直線と見なしても差し支えないものとされ、実際の検証においてもそれ程大きな誤差は生じないことが明らかとなっています。

なお、この再突入第2段階終期の高度 5万フィート (1.5万m) にける弾体の速度はまだ 約1万フィート/秒 (約3000m/秒) であることに注意して下さい。

そして、最後の高度5万フィート以下の終末段階においては、弾体の軌跡は再突入の速度にはほとんど関係しません。

したがって、もしこの終末段階においてもその前の第1及び第2段階と同様に直進である見なした場合との差は、打ち上げ時の燃焼終了点 (Burnout Point) と同高度における再突入角 (φ) だけに関係することになります。

このことから、通常の弾道弾の速度の範囲においては、 21000フィート/tan φ (あるいは 3.5マイル/tan φ) として実際の値とほとんど誤差がないことが知られています。

つまり、再突入段階におい飛翔軌跡の全体が直進であるとすると、その水平距離は次の式となります。

BM_re-entry_form_04.jpg

そしてこれに終末段階における弾道軌跡の上記の差を加味すると、

BM_re-entry_form_05.jpg

で表されることになります。

BM_re-entry_flight_03.jpg


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posted by 桜と錨 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと
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