2015年12月24日

オールド・セイラーの眼 (42)


◎ 第77巻 「熊野」

シリーズ第77巻は 「最上」型4番艦の「熊野」で、当初の軽巡としての姿である1938年の設定となっています。

077_Kumano_model_01.jpg

077_Kumano_cover_s.jpg

本シリーズでは 「最上」 型は4隻全てラインナップされており、「熊野」 が最後に軽巡時代の姿で今回モデル化されました。

4隻の内どれかは1つは軽巡としての姿が望まれたわけで、これは一般的には 「最上」 又は 「三隈」 が順当なところであると思います。

しかしながら「最上」 型の3、4番艦である 「鈴谷」 「熊野」 は船体設計をやり直した改最上型、あるいは 「鈴谷」 型とも言えますので、本シリーズでもこの両者の差別化も必要となります。

「最上」 は航空装備を強化した改造後、「三隈」 は 「最上」 型重巡としてのスタンダード、「鈴谷」 が改最上型の重巡としてモデル化されたため、この 「熊野」 が軽巡としてラインナップされたのは、結果として極めて自然な選択であったと考えます。

例によってモデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLに既にアップされています。


おまみ氏の評価としては、いろいろ細かいことも指摘されていますが、総合としては、

   “考証においては大きなミスはないように思う”
   “造形は平均レベル。可もなく不可もなくという感じ”

と言うものです。 そして、主砲を除くと先行の 「鈴谷」 のモデルと良くも悪くもデザインが極めて酷似しているとの所見。

これらのことについては私も全く同感です。 その意味では、もう少し評価を上げても良いかなと思ったのですが ・・・・

しかしながらこのシリーズ、同型艦であっても全て一からモデル・デザインをやり直しており、それはこの 「鈴谷」 と 「熊野」 でも同じです。

それにも拘わらずこの2つのモデルが極めて良く似ている、ということは即ち元の図面が同じということです。

このためその良い面はともかく、悪い面としては第66巻 「鈴谷」 の時に指摘した船体のサイズと形状が違う、という点はそのままになっています。


つまり、一からモデル・デザインをやり直したにもかかわらず、考証的な再チェックはなされていないと言うことです。

ただし、上甲板以上のデザインについては 「鈴谷」 よりは向上しており、15.5糎三連装砲塔 (サイズなどに若干の疑問はあるものの) により、「最上」 型 “軽巡” の雰囲気は良く出ていると思います。

まあ、台座のラベルが「重巡」になっていることや、後ろ側の艦載機が移動架台に載っていないことなど、細かいことを言い出したらキリがありませんが、1/1100スケールのフルハル・モデルとして気軽に並べて飾って見るには、まずは十分な見栄えではあるでしょう。

日本艦については、シリーズ冒頭からせめてこのレベルくらいが保たれていればと思いますが ・・・・


ところで、“ブック” と呼ばれる付属の解説本 (本来はこちらがメインなんですが (^_^; ) については、既にお話ししてきたとおりシリーズの当初から私は一切ノータッチでしたので、本連載でもほとんど触れてきませんでした。

まあ、艦船が専門でないライターさんが書いておられるものですし、対象とする初心者さん向けのものであることから、でもあります。

しかしながら、“?” と思わざるを得ない個所も毎号いくつもあることもまた確かです。 この第77巻では、その筆頭は次のものでしょう。

077_Kumano_p6_mod_s.jpg
(解説本6ページより)

キャプションは 「新造時の主砲である15.5cm 3連装砲塔5基を装備した1930年代中頃の熊野。 主砲の砲身を別々に俯仰できることが写真からわかる。」 だそうです。

これ、昭和17年8月撮影とされる有名な写真なんですが (^_^;

20糎砲への換装により、仰角をかけた状態で定位置とせざるを得なかった2番砲塔と、水平が定位置の3番砲塔の砲身が重なって写っているだけのことで、きちんと見れば、各砲塔2門の連装砲であることは明白なんですがねえ。

因みに昭和14年撮影とされる軽巡時代の有名な写真を左右反転させたものがこれです。 この様なものを間違えるのかと。

Kumano_photo_S14_01_s_mod.jpg

これを要するに、ライターさんも編集担当者さんにも、艦船の専門家は本シリーズの企画にはおられないと言うことは明らか。

如何に初心者向けのものとはいえ、これでよいのかは少々疑問とするところではあります。

まあ、購読者は “付録の” スケールモデルが目当てだから、と言えばそうなんですが ・・・・

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