2015年11月11日

オールド・セイラーの眼 (39)


◎ 第74巻 「千歳」

シリーズ第74巻は日本空母の「千歳」で、1944年に栗田艦隊の囮部隊となった小澤艦隊の一艦としてエンガノ沖海戦参加時の迷彩塗装の設定となっています。

ご存じのとおり、「千歳」は有事には空母に改造されることを前提にした水上機母艦として建造されましたが、ミッドウェー海戦後の空母増勢計画により(予定どおり)空母に改造されたものです。

074_Chitose_model_01.jpg

074_Chitose_cover_s.jpg

いつもどおり、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLです。

細かな点はいろいろ指摘されているものの、総合評価としては一言

“ 細かい事は気にしないのでキレイな迷彩姿の千歳の模型が欲しいという人にはオススメ ”

というものです。

迷彩モデルとしては外国艦の見栄えに押されている本シリーズのなかで、これは確かに評価できるでしょう。 ただし残念ながらあくまでも “迷彩塗装のドハデさにおいてだけは” です。

日本艦、特にこれまでの空母のモデルの場合と同じく、というよりそれ以上に考証とモデル・デザインの両面については全く評価すべき点はありません。 並以下であり 「千歳」 のスケールモデルとは言い難い出来です。

したがって、おまみ氏の言う “細かい事は気にしないのであれば” どころか、塗装を除けば “千歳もどき” です。

問題なのは、この飛行甲板前部の “垂れ下がり” です。 なんでしょうかこれは。

074_Chitose_model_03.jpg

チョット見には例によって前部支柱が寸足らずでこのための組立ミスかな、と思いましたが、公式サイトのサンプル写真でも、またおまみ氏のものでも同じですので、これは明らかに考証・デザインの誤りと考えられます。

したがってもうこのことだけでもモデル全体の印象が冒頭写真のとおり 「千歳」 とは全く違ったものになってしまっています。

そして考証面については、おまみ氏もいろいろ指摘されていますが、それよりも何よりも船体形状が全く違います。

この 「千歳」 は直ちに考証に使用できる一般艤装図などは公表されてませんし (私の知る限りでは)、写真なども十分ではありません。 これからするならば、この設定時の考証には手間暇がかかり、モデリングもなかなか難しいものがある一隻と言えることも確かです。

それでも断片的にはいくつかの公式図が知られていますし、考証に役立つ写真もそれなりにあることはあります。 したがって、しっかりした考証をしていればそう極端な大きな誤りは出ないはずですが ・・・・

まず艦首側面形状が違います。

074_Chitose_model_02.jpg

Chitose_draw_bow_01_s.jpg  Chitose_photo_bow_1936_01_s.jpg

次いで、船体後部の形状などはちょっと酷いです。 いったいどこからこんな図面が出てきたの、というくらい全くの別物になっています。

074_Chitose_model_04.jpg

Chitose_draw_stern_02_s.jpg

そして船体断面形状も全く違います。

Chitose_draw_section_01_s.jpg

本シリーズ開始早々にモデル・アドバイザーとして参画した時に、ラインナップとして後になればなる艦ほどモデル化が難しいので、前半の比較的楽な (= 資料が多い) 艦が並んでいる間に、これらは早くからじっくり考証とモデル・デザインに取り掛かる必要がありますよ、と度々アドバイスしていたのですが ・・・・

これに加えて、相変わらず初歩的な考証ミス、というより基本的な事項を理解していないということが多すぎます。

例えば、おまみ氏の指摘にもある艦載機の並び順、右舷煙突以降の高角砲・機銃の防煙用シールドの欠落、などなどです。

そしてモデル・デザインですが、またしても他の日本空母の例に漏れず、飛行甲板下の高角砲・機銃などの各プラット・フォームやスポンソンと、その下の支柱部分とが全て大きくずれています。

こんなことはモデル・デザイン段階でも、初期のテスト・サンプル組立段階でも、一目でおかしいことは気づくはずのものです。 本当に開発・製造過程において誰一人として気づかなかったのでしょうか?

これらのことは既刊の日本空母モデルで同じことを毎回毎回繰り返しており、その度にいろいろなところから指摘されてきたはずです。

それにも拘わらず、シリーズがここまで進んできて何故いまだにこんな初歩的なミスさえ改善されないのでしょうか? 私には全く理解不能です。

毎回同じことばかりを繰り返して指摘していますが ・・・・

本当にこの様な考証とモデル・デザインのものが、本シリーズ出版の企画当初から意図していたレベルなんでしょうか? 本当にこれで良いのでしょうか、イーグルモス社さん?

残念ながら、私としては “しっかりして下さい” としか申し上げようがありません。

この記事へのコメント
レビューお待ちしていました。

私の手元の模型は艦首支柱がきちんと固定されていなかったためか飛行甲板の垂れ下がりはそれほどなかったのですが、そんなレベルのお話しじゃないですよね。
どうしてこうなってしまったのでしょうか?と不思議でなりません。
今回も台座のネジが錆びていましたが、これは一度や二度ではありませんし、同様にブリスターにボール紙の欠片が入っているのも一度や二度じゃありません。
生産現場の管理が全くできていない証左です。

当初ここには空母神鷹がラインナップされていたと記憶していましたが、あなたの監修の許、他の艦隊型空母では省みられなかった護衛戦のエピソードがブックレットであればどれほど良かったか、と思います。(資料がほとんど残っていないのは承知の上です)

本当に残念なシリーズですね。どうしてこうなってしまったのでしょうか…?
Posted by さうりう at 2015年11月14日 19:30
さうりうさん

申し上げるまでもなく、本シリーズは1巻が2000円程度で解説本と1/1100スケールのフルハル・モデルをセットとして全80巻を出版する企画です。

見方によってはそのコンセプトに沿った大変お手軽なお買い物と言えます。 その一方でモデルそのものの出来についていろいろ問題があることもまた確かです。

イーグルモス社としても営利出版である以上、モデルの製造はどうしても中国企業にまわさなければとても採算はとれないでしょう。 これは致し方のないことです。

それだからこそ、企画と製品管理の面において決して手を抜くことができません。 日本から中国へ外注しているものは全てこの点について大変な努力と労力を払ってきていることはご承知のとおりです。

それ故に、私がこのブログで再三辛口な所見を書いているのも、このことについてイーグルモス社に叱咤激励をしているわけです。

もちろん、このシリーズ、飾り棚やケースに入れて並べて見ていただければ、決して見栄えが悪いものではないことは、これまでにも申し上げてきたとおりです。

あとは購入される方々がどうお考えになるかですね。

ただもう一つ申し上げるならば、イーグルモス社はこの手のシリーズとしては先行大手に比べると新参です。 したがって、これからこれら大手に肩を並べていくには、私としては “質” の高さが必要と思います。 これで勝負できて初めて “さすがイーグルモス社” と言われる評価が獲得できるでしょう。

私としては本シリーズでそれを期待したのですが ・・・・

Posted by 桜と錨 at 2015年11月16日 22:19
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