2015年09月12日

オールド・セイラーの眼 (34)


なかなかブログ更新の暇がとれなくて滞っておりますが ・・・・ こちらは2週間おきに新しいのが出ますので、なんとかこなさなければなりません。

既に次の第70巻が発売になっておりますが、一つ遅れと言うことで (^_^;

◎ 第69巻 「朝日」

シリーズ第69巻は日露戦争を勝利に導いた旧海軍6隻の戦艦のうちの1隻 「朝日」 で、日本海海戦時の1905年の設定となっています。

本シリーズでは既に第8巻 「三笠」、第30巻 「敷島」 が出ておりますので、3隻目のインナップになります。

069_Asahi_model_01.jpg

069_Asahi_cover_s.jpg

いつもどおり、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLです。


総合として “今回の朝日は基本良い出来” “造形は敷島型の中では最も良い” という評価です。

しかしながら、私としては既にシリーズ70巻を目の前にして残念ながらこの出来なのか、という想いです。 考証、モデルデザインの全ての面において並以下としか評価できません。

逆に言うと、前・後煙突の形状はそれなりに正しいのですが、こういう当たり前のことが評価ポイントに見えてしまいます (^_^;

考証とモデル・デザインとで問題をどこで線引きするかということがありますが、まずは主として考証上の点から。

(1)船体の最大幅は水線付近で2ミリ近く広くなっており、逆に全長は2ミリ近く短くなっています。 しかも船体断面は水線付近で膨らんだ丸い形状が上手く表現されていないため、上甲板ラインが異常に広く(従って中央構造物の幅も違う)、かつ船体全体が極めてデップリとボテッとしたものとなっています。

(2)艦首側面形状が正しくありませんし、それ以上に艦尾部側面形状などは全く誤っています。

(3)1905年の設定であるならば、ファイティング・トップは1904年末に撤去されいるにも関わらず、これが表現されています。

(4)「三笠」 「敷島」 で表現されていたボートダビットがないことはともかくとして、日露戦争中は後甲板の短艇は撤去されています。

(5)ボート・デッキは鉄甲板であるにも関わらずデッキ・タン塗装となっていますし、また日露戦争中の煙突頂部の黒色塗装の範囲も違います。

(6)その他の細部はおまみ氏も指摘されているところですが、それ以外にも、前部マストのヤードは3本、同前部マストの通称 「鳩の巣」 と言われる見張所の欠落、などなど限りがありませんが ・・・・

(9月13日追記) : 肝心なことを一つ書くの忘れていました (^_^; 見かけというか見栄えの点では最も大きな考証ミスと言えるでしょう。

上甲板は全面木甲板ですが、前後主砲砲口の旋回範囲付近は幅広い円弧状の鉄甲板となっており、これが表現されていません。

Asahi_draw_QD_01_s.jpg

Asahi_photo_QD_01_s.jpg

これは当時の英海軍における大口径砲搭載艦の流行のもので、おそらく発射時のブラストから甲板を保護するための措置であったと考えられます。

前部は甲板幅も狭く、かつキャプスタンやアンカー・ベッドなどがありますのでそれほどでもありませんが、後部は甲板が広いので非常に目立つところです。

ちょっとこれは痛いかと。



次ぎに主としてモデル・デザイン上の問題点です。

(1)スターン・ウォークの表現などはスケールを考えても “何これ” というレベル。

(2)主砲のバーベット部の形状が正しくありませんので、これが見かけを損ねています。

(3)前後部艦橋の形状バランスがよくありません。 このため艦全体の印象がかなり違ってきております。

(4)舷側の12ポンド砲は、砲門部はそれなりに表現されているものの肝心な砲身がありません。 おまみ氏は部品の強度上からと好意的に見ていますが ・・・・ それにしても砲門の凹部にまで舷窓表現の黒点があったり (^_^;

(5)部品分割が悪いためか前部の錨床 (アンカー・ベット) の形状が不良ですし、そもそも何で錨や錨鎖を黒色にするのか?

(6)艦尾の中錨は前部の主錨や副錨より大きいという (^_^; しかもわざわざこれも黒色で。


う〜ん、元モデル・アドバイザーの一人としては、シリーズがここまで進んできてちょっと残念な出来としか評価のしようがありません。

それともイーグルモス社さんは、このレベルでシリーズのスタンダードだからOKとしているのか ・・・・ ?

はっきり申し上げて、デザイナーは艦船についての全くの素人さんと考えられますし、そしてイーグルモス社さんは企画段階で仕様書と資料をそのデザイナーに投げただけで、後のチェックはしていないのではと思われるのですが、いかがですか?

上に掲げた指摘点などは、モデル・デザイン以降どこかの時点で一度でもきちんとチェックをしていれば防げる、“凡ミス” ともいえるものばかりなんですが。


それよりも何より申し上げたいのは、なぜラインナップとしての 「朝日」 の選択なんでしょう?

冒頭に書きましたように、既に 「敷島」 型として 「三笠」 「敷島」の2隻が出ています。 全80巻のシリーズで更に3隻目の 「朝日」 を出す必要性が私には理解できません。 世界の 「軍艦コレクション」 であって 「戦艦コレクション」 ではないのですから。

069_Asahi_model_02.jpg
( 手前から今回の 「朝日」、第30巻 「敷島」、第8巻 「三笠」 の順 )

ラインナップのバラエティさからするならば、日露戦争期の選択ならば「春日」「日進」か「八雲」などの装甲巡洋艦でしょうし、あるいはせめて「富士」「八島」かと。

そして日露戦争期からでなくとも、日清戦争期の三景艦などは当然ラインナップされていてしかるべきであったと考えます。

前回も書きましたが、どうも本シリーズのラインナップ選択の基準が曖昧というか、筋の通ったコンセプトが感じられません。

もう少しコレクションとして魅力ある選択が欲しかったところです。
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