2015年08月13日

オールド・セイラーの眼 (33)


◎ 第68巻 「球磨」

シリーズ第68巻は旧海軍が誇った5500トン型軽巡の最初のタイプである 「球磨」 型のネームシップ 「球磨」 です。

これにて、5500トン型軽巡3タイプ及びその前の 「龍田」 型を合わせた4タイプの全てが揃うことになりました。

068_Kuma_model_01.jpg

068_Kuma_cover_s.jpg

いつもどおり、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLです。


総合として “考証が毎回詰め切れていません” という評価です。

私としても全くそのとおりと思いますが、むしろ詰め切れていないというよりは、疎かになっていると言った方が良いでしょう。


・・・・ う〜ん、それにしても何故わざわざ1940年設定の 「球磨」 なんでしょうか?

「球磨」 型の中から選定するにしても、私ならこの設定年代の 「球磨」 は絶対に選択しません。 改造時期・改造点がはっきりしていませんし、公式図はもちろん、満足な写真さえ残されていないからです。

前部及び後部の探照燈の改造、高角砲から機銃への換装、消磁電纜の追加、前部マストのヤード、後部見張所などなど、実施時期が正確に確定していないところが多くあります。

考証的にキチンとしたモデルとするなら、少なくとも鮮明な写真が残されている新造時あるいは昭和10年前後とするべきであったと考えます。

もちろん 「球磨」 の艦歴上特段何かモデル化するに足るような出来事があった訳ではありませんので ・・・・


そして何故 「球磨」 型としてこの 「球磨」 の選択なんでしょうか?

5500トン型軽巡3タイプ全て一番艦、というのも判らないわけではありませんが、シリーズとしてのバラエティさを出すなら、この 「球磨」 型については大戦中の姿のものの選択の方がベターであったと言えるでしょう。

その意味ではおまみ氏も推奨している 「北上」 か 「大井」 とするべきであったと言えますし、あるいは迷彩塗装の 「多摩」 「木曾」 でも良かったと考えます。

これらの方がこの1940年設定の 「球磨」 よりは、はるかに購読者に受け入れられ、歓迎されたと思うのですが ・・・・


そしてこの1940年設定の 「球磨」 の本モデルについてです。

確かに、前部艦橋の形状や1番と2・3番煙突との形状差など、このスケールとしてはある程度評価できる個所がありますが、その反面、飛行作業甲板左舷の形状誤りなどは “一体何に基づいたの?” と言わざるを得ないものです。 どうやったらこんな大事なところを間違えるのか、と。

068_Kuma_model_06.jpg

もうこの件一つでこのモデルの考証レベルを評価するには十分と言える程です。 設定年代の状態について、真面目に調べて検討した結果とは全く見えません。


これら以外の上部構造物や艤装・装備品などについてはおまみ氏が細かく書かれていますのでそちらに譲るとして、そもそも船体形状さえキチンと考証されていません。

一般的に 「スプーン型」 と称される、艦首側面の形状が正しくありません。

068_Kuma_model_02.jpg  Kuma_draw_side_01_s.jpg

船体断面形状、特に船底部の形状やビルジキールの位置も違います。

068_Kuma_model_03a.jpg  Kuma_draw_hullcut_02_s.jpg

そしてもうこうなると笑わざるを得ない後部船底部。 一体どこからこの様な形状が出てきたのでしょうか? 多少なりとも艦船についての知識があるなら、この様な形には絶対にならないことはすぐに分かるはずです。 先行の 「長良」 「川内」 でも決して正しくはありませんが、少なくとも艦船モデルとしてはまがりなりもそれらしくなっていたのに ・・・・ です。

068_Kuma_model_04a.jpg
( 今回の 「球磨」 )

068_Kuma_model_04b.jpg
( 「長良」 )


モデル・デザインについては、もう本シリーズで毎回とも言えるほど指摘したところがそっくりそのままです。

特に今回は、機雷敷設用軌条上のリノリュウム押さえのモールドのミス、短艇、主砲、魚雷発射管などなどのデザイン不良を始め枚挙に暇がありませんが、それこそ上記の考証ミスに比べれば小さい小さい、となってしまいます (^_^;

要するに1/1100というスケールによるデフォルメを考えても良い出来とはとても言えません。

そしてここまで来てもシリーズとして全く統一されていない共通の装備品や艤装品はもちろん、モデル一つ一つを一からデザインするため、5500トン型軽巡3タイプとして各部のデザインがバラバラの出来不出来の多さ。

その反面、シリーズ共通の部品分割法や組立・塗装の不具合点はやはりそのままで ・・・・


こうして1+3タイプを並べて飾って眺める分には、本シリーズの基本コンセプトからも決して見栄えは悪いものではありません。 ( 「長良」 の木甲板ミスは目立ちますが (^_^; )

068_Kuma_model_05.jpg
( 手前から 「球磨」 「長良」 「川内」 「龍田」 の順 )

折角のフルハル・モデルでのシリーズなんですから、なぜもっと基本的な考証とデザインに力を入れないのでしょう?

そしてシリーズとしてのモデル選択になぜもっと明確なポリシーを持たせないのでしょう? 実に勿体ない話しですね。

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