2015年07月30日

オールド・セイラーの眼 (32)


◎ 第67巻 「ハーミス」

シリーズ第67巻は英海軍の空母 「ハーミス」 (ハーミーズ) で、1942年インド洋作戦実施中の旧海軍機動部隊によりまさに “爆撃標的” として撃沈された当時の設定とされています。

ご存じのとおり、この 「ハーミス」 は1924年に建造された英海軍初の純粋な空母ではありますが、試作艦的意味合いの強い小型空母です。

日本においては上記のとおり、一応機動部隊が撃沈した英空母としてその名はよく知られていますが、その一方で艦そのものについての詳細はあまり知られていない一隻でしょう。

したがって英国の出版社たるイーグルモス社さんが、自国の空母をどのようにモデル化するかが大きな見所の一つであるといえます。

067_hermes_model_01.jpg

067_hermes_cover_s.jpg

いつもどおり、モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLです。


総合として “飛行甲板の木張り表現ミスさえなければ、あっさりディテールながらシルエットがハーミーズの特徴捉えてるし、迷彩塗装の船体もカラフルで見映えするので良作だったと思います。惜しい。” という評価です。

確かに、飾って眺める分には、濃緑色の飛行甲板と船体の迷彩もあって、見栄えとしては十分なものと思います。 これは評価してもよいでしょう。

そして、日本においては図面も含めて資料が非常に少ないことから、スケール・モデルとしての稀少価値も併せて、私もこの 「ハーミス」 のモデルには大変期待をかけるものがありました。

それはそうでしょう、イーグルモス社さんにとっては自国の空母です。 シリーズとして満を持しての選択であり、モデル化であると考えるのは当然のことです。


・・・・ しかし残念ながら、その期待は全く裏切られたと言って良いでしょう。

結論としては、十分な考証は全くなされていないと断言できます。

その典型がおまみ氏の指摘にもある飛行甲板の木甲板のモールドです。 このようなことは、残された写真をチェックしただけでも一目瞭然のものです。

HMS_Hermes_photo_01.jpg

そして、各部もかなり違います。

その一つが、後部エレベーター付近の飛行甲板の形状です。 ここは、写真を見ても明らかなように、緩く盛り上がっていなければなりませんが、これが表現されていません。 また、飛行甲板周囲の転落防止用ネットとその支柱が表現されていません。

067_hermes_model_02.jpg

HMS_Hermes_photo_02a.jpg  HMS_Hermes_photo_02c.jpg

それに目立つ太い飛行甲板支柱のところから格納庫甲板が艦尾甲板より一段高くなっていますが、モデルでは面一のままの表現となっています。

HMS_Hermes_photo_04.jpg

艦尾の形状も全く違います。

067_hermes_model_03.jpg

HMS_Hermes_photo_03a.jpg  HMS_Hermes_photo_03b.jpg

これらも写真をチェックしていればすぐに分かるはずのものです。

そしてこれら全ては 「ハーミス」 の大きな特徴的なところですから、当然ながらキチンと表現されなければなりません。

加えて、後部エレベータ下には搭載機が (何故か) 1機置かれていますが、この状態を表現するならエレベーターは下降状態でなければなりません。

そしてその両脇に細い支柱のようなものが表現されていますが、これは本来エレベータの昇降用ワイヤーの部分ですから、エレベーターが下降状態でなければ見えません。


モデル・デザインについては、1/1100というスケールを考えたとしても、非常に大まか (ラフ) であることはおまみ氏の指摘にもあるとおりです。

( 艦橋構造物などはちょっとラフというレベルを超えていますが ・・・・ (^_^; )

その他飛行甲板前部が艦橋構造物前端付近のところで幅が広くなっていなければなりませんが、これが例によってダイキャスト船体との接合及び部品分割の関係で上手く表現されていません。 せめてここの舷側沿いも濃緑色に塗られていればまだ、と思います。

067_hermes_model_04.jpg

それに、これだけ大きな平面を持つ艦橋構造物両側面になぜ迷彩がないのでしょうか?

HMS_Hermes_photo_1942_01.jpg
( 沈没直前の 「ハーミス」  艦橋構造物側面の形状と迷彩がよく判ります )


・・・・ で結局のところ、このモデルデザイナーは、キチンとした考証やモデルデザインをしておらず、単にその辺にある資料をお手軽に利用しただけではないかと疑わざるをえません。

例えば次のURLにあるイラストをご覧下さい。

http://www.shipbucket.com/images.php?dir=Real%20Designs/Great%20Britain/CV%2095%20Hermes%201942.png

このイラストをそのまま1/1100スケールのモデルにしただけと言われても仕方がないでしょう。

そして甲板上の航空機の配列にいたっては、機種こそ違うものの次のURLにあるスケール・モデルの写真そのもの (^_^;

http://sdmodelmakers.blogspot.co.uk/2013/02/hms-hermes-95-aircraft-carrier-model.html

これでは折角の見栄えではあっても、元モデルアドバイザーの一人としては全くのガッカリです。

イーグルモス社さん、厳しい指摘ですが、本当にこのような考証やデザインのやり方でいいんでしょうか?

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