◎ 第63巻 「瑞鶴」
シリーズ第63巻は、旧海軍正規空母のラインナップ最後の 「瑞鶴」 で、1941年の設定とされています。
大方の期待を裏切り、残念ながら迷彩塗装ではなく、開戦時の設定ですが ・・・・


モデラーさんとしてモニターをされているHN 「おまみ」 氏の評価記事は次のURLです。
“プロポーションの根本である船体形状を間違えてるのはちょっとキツイ” の結果として “全体として今回の瑞鶴は翔鶴より後退したと言わざるを得ません” と評価されています。
細部の指摘事項については、このおまみ氏の記事をご参照していただくとして、私として特に問題とする点は次のとおりです。
1.船体のプロポーション
おまみ氏もこの件については指摘されていますが、実際のところ、実艦の最大幅 29m (1/1100スケールで 26.4mm)、喫水線幅 26m (23.6mm) に対して、モデルでは 23.3mm、21.7mmしかありません。
その一方で、飛行甲板は実艦の最大幅 29.5m (26.8mm) に対して 27.8mmです。
この結果は、先の第60巻 「蒼龍」 と同じことに。 飛行甲板とその両舷にあるプラットフォームと船体舷側の構造物との辻褄が全く合っていません。


( 上 : 右舷、下 : 左舷 )
このようなことは、艦船の素人さんでも一目で気付くはずのものです。 なぜ度々こんなことが続くのでしょうか?
デザイナーは自分でデザインしていておかしいと思わなかったのでしょうか? そしてイーグルモス社の担当者も、デザインやモデルの試作を見た時に誰も不思議に思わなかったのでしょうか?
この問題に比べれば、船体に消磁電纜が表現されていないことなどは小さいことになってしまいます。
2.艦首形状
もう一つの大きな欠点が艦首のバルバス・バウ。
姉妹艦の第18巻 「翔鶴」 の時はバルバス・バウは表現されていたものの、側面形状が大きく違っていました。
今度の 「瑞鶴」 は、このバルバス・バウが表現されていない上、側面形状もまだ正しくありません。 なぜこのようなことに?

3.飛行甲板
飛行甲板は空母のモデルにおいてはその “顔” ともいえるものです。
この 「瑞鶴」 でも飛行甲板の着艦制動索などが正しくありませんし、部品デザイン及び組立不良により飛行甲板が波打っています。
これらにより、モデルの見栄えを大きく損ねています。

この部品分割時のデザイン不良と、それに起因する組立不良は本シリーズ当初からの問題点であり、いまだに改善されていないことの一つです。
3.各種装備品など
機銃・高角砲を始めとする旧海軍の各種装備品について、この63巻に至るまでいまだにデザインの共通化が図られていません。
そして今回の 「瑞鶴」 では、高角砲などは “今頃何これ?” という形状のものです。 しかも、右舷煙突より後部の防煙用盾付きの高角砲や機銃は、その他のものとの違いさえ表現されていませんし、機銃射撃装置は全て盾付きで誤りです。


( 上 : 右舷前部、下 : 右舷後部 )
既に度々指摘してきましたが、本シリーズでは同型艦であっても、何故か装備品に至るまで毎回全て一からデザインをやり直しています。 なぜこの様なことをするのでしょう?
結局本シリーズにおけるモデル・デザインのやり方の基本が間違っているのだと考えます。 これも度々指摘してきましたように、史料・資料の多少に関わらず、考証とデザインにかける手間暇は毎回同じである、ということです。
このため、この史料・資料の量と質が、そのままモデルの出来に反映されており、シリーズとしてのモデルの質、即ち “出来” の均一化が図られておらず、各モデルごとそのレベルがバラバラになってしまっています。
これは単に実艦の史料・資料が多い少ないだけではなく、1/1100の統一スケールにおける、デザインのあり方の問題です。
何もこの1/1100スケールの本シリーズに “超絶” 的な精密さを求めている訳ではありません。
しかしながら、実艦の忠実な考証に基づいて、スケール的な適度なデフォルメが必要であることは当然のことです。
かつて私がモデル・アドバイザーの一人としてお手伝いをしていた時にも度々、これではダメ、と進言してきたのですが ・・・・
この 「瑞鶴」 の考証及びモデル・デザインについては、残念ながら本シリーズの中でも低い部類にしか評価できません。
そしてこの点については、最近の本シリーズはちょっとレベルが悪くなっていると感じます。
イーグルモス社さん、このような現状で最後まで走られるのでしょうか?