2016年05月29日

旧海軍の従軍記章と記念章


本家サイトの 『談話室』 にて 「大正三年乃至大正九年戦役従軍記章」 と 「支那事変従軍記章」 の授与範囲についてお尋ねがありましたので、本家サイトの今週の更新として 『海軍法規類集』 コーナーで旧海軍の各種の従軍記章及び記念章記章に関する規定を追加公開しました。

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( 大正三年乃至九年戦役従軍記章図式 )

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( 支那事変従軍記章図式 )

また、『水雷講堂』 コーナー中の旧海軍の魚雷及び同発射機一覧の頁を更新しました。

旧海軍の魚雷はともかく、その発射機については太平洋戦争期以外のものはほとんど知られておりませんので、取り敢えず水上発射管について旧海軍の公式史料から纏めてみました。 まだ抜けがあるかもしれません。

なお、これら各種の魚雷及び発射機の詳細については今後機会をみて順次公開していくつもりにしております。

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2016年05月25日

戦後艦艇の戦闘システム


先日 『世界の艦船』 6月号特集の 『現代の艦隊防空』 記事の所感で “各ハードウェーアの内容について少々物足りない” と書きました。

もちろん、特集そのものが非常に広汎なものであり、かつ月刊誌として他の記事との関係も併せると、紙幅的にこの要求には無理があることは承知の上です。

それはそれで致し方ないことであり、また当該誌で採り上げられたそれぞれの記事も限られた紙幅の中で良く纏められたものであると思います。

しかしながら、これらのハードウェーアの詳細について書かれたものはあまり見当たらないのもまた事実です。

本誌についても、例えば艦載対空ミサイルについてはかつて岩狭源晴氏が24回にわたり連載 (通刊47号〜98号) された 『艦載用対空誘導弾について』 などは一般読者向けとして秀逸の記事であったと思っていますが、その後の続きの話しについては、残念ながらこの連載に匹敵するものは他の執筆者からもいまだに出てきていないといって過言ではないでしょう。

また、本誌の性格からしてあくまでも 「艦船」 が主体であって、例え連載の形を採ったとしても、搭載武器などについて多くの紙幅を割くことには色々な制約があるかもしれません。


で、ではそれならば、と言うことで、本ブログとしてこの戦後艦艇の戦闘システムについてもう少しその詳細を紹介していくのも一つのテーマになるかと。

当然ながら、個々のハードウェーアといっても、それに関係する他のシステムやその運用法、そして戦術思想などの変遷も含めなければ、個々及び全体の意味・意義は見えてこないでしょう。

いつ、どれだけのものを紹介できることになるのか判りませんが、それこそ “気ままに” UPしていければと。

・・・・ こういう ↓ 古い資料をディジタル化しながら、ふと考えた今日この頃 (^_^)

DDG-2_JPTDS_ss.jpg


因みにこのブロック・ダイアグラムにある DDG−TDS (JPTDS) ってご存じでしょうか?

かつて米海軍が初めてミサイル駆逐艦として建造した 「DDG-2 Charls F. Adams」 型のシステムが古くなってきた時、その近代化の一つとしてそれまでのミサイル指揮システム 「WDS」 の換装用として新たに開発したものです。

実はこれ、海上自衛隊が 「あまつかぜ」 の後継艦として建造した 「たちかぜ」 型に 「WES」 という初のディジタル・コンピューターを使った武器指揮システムを導入しましたが、逆に米海軍がこのアイデアを元にして、これにNTDSの機能も含めた形に纏め上げたものなんです。

対空ミサイルについても、それだけでは意味はないのであって、個艦として、部隊としてこういうシステムと組み合わされて初めてその機能・能力が十分かつ有効に発揮できることになります。

こういう話しも含めて紹介していければと思っていますが ・・・・

posted by 桜と錨 at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代戦のこと

2016年05月24日

錨と錨鎖の話し (9・補)


捨錨準備の補足

HN 「きのけんさん」 から前回の捨錨の話しに関連して次のような補足質問をいただきました。

駆逐艦の錨を引き上げられるワイヤの直径となるとどのくらいになるのでしょうか。
また、図にあるワイヤと丸材との締結部は捨錨時に順次勝手に切断されていくよう、ワイヤよりも強度の弱いシュロ縄などで締結されているのでしょうか。


事前に捨錨準備を行う余裕がある場合には、すでに荒天錨泊として十分な長さの錨鎖 (一般的には 4x水深(m)+145m) を出しておりますので、収錨時にこの鋼索に直接錨の重量がかかるようなことはありません。

したがって、鋼索にはこの錨鎖を引き揚げるのに必要な強度が求められます。 旧海軍においては通常は錨鎖2節 (50m) 程度に耐えられるものとされています。

これは錨鎖の1節の重量と鋼索の強度から簡単に計算することが可能ですが、一般的には更に簡単にして、軽巡程度以下の艦艇においては錨鎖の径に応じて次表のものを用いることとしていました。

shabyou_03.jpg

特型駆逐艦等でも錨鎖径は40ミリ程ですので、24ミリ以上の鋼索を使用することになります。


鋼索を綰ねて外舷側に用意した円材に順次 「雑索」 と呼ばれる麻索の細索で固縛していきますが、この結び方は 「曳索結び」 と呼ばれるものです。 ただし、商船などで用いられるものとは少し異なり、「ふた結び」 と 「ねじ結び」 とを組み合わせた特種なものです。

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(ちょっと綺麗な図がありませんので (^_^; )

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( ふた結び )      ( ねじ結び )

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( 一般的な曳索結び )

捨錨時には前甲板指揮官の 「スリップやれ」 の号令によりスリップを切る (ハンマーで掛け金を外す) のと同時に最初の2〜3ヶ所をナイフで切り、あとは鋼索の走出状況を見ながら、次々と切っていきます。

もちろん、鋼索の張力がかかった時は自然に切れますが、この場合円材などを壊すおそれも出てきます。

この固縛索を切るのも危険な作業になりますので、熟練の運用員や砲術科員(通常は前甲板の作業員)が当たりますが、スリップ操作とともにいつも緊張する瞬間です。

なお、上記の鋼索を使用しますので、示錨浮標索もこれを引き揚げるためにそれなりのものが必要になることは申し上げるまでもありません。

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前 : 「錨と錨鎖の話し (9)」

posted by 桜と錨 at 14:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 海軍のこと

2016年05月23日

雑草の小さな花々


我が家の庭は小さいにもかかわらず不精をして普段から放りっぱなしになっています。

そのために逆に様々な雑草がいつの間にかあちこちに増えまして、この季節色々な小さい花々が順番に咲いて目を楽しませてくれます。

いま咲いているものをいくつか。

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( ドクダミ )

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( ヒメフウロ )

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( ユキノシタ )

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( ビオラ )

本当に単なる雑草の類ですが、これはこれで良いものです。

考えてみれば、確かに住宅の庭ですからあれこれ手を入れて、そこの住人の視点からした綺麗な庭を作るのも一つの方法ではあります。

しかしながら、自然とは不思議なもので、放っておいてもちゃんと綺麗な姿を見せてくれることもまた確かです。

ふと、世の中全て自然に対して人間はあまりも自己都合を押しつけ過ぎているのではないか、と暫し。

posted by 桜と錨 at 12:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 気ままに

2016年05月22日

錨と錨鎖の話し (9)


捨錨 ・ 収錨 ・ 探錨

以前 『錨と錨鎖の話し』 として連載し8回で止まってしまっていますが、HN 「きのけんさん」 から捨錨に関連して次のようなご質問いただきましたので、前回の続きではなく単発頁として追加いたします。

捨錨時には錨にブイを付けて目印にする、とありますが、ブイを目印に位置は確定できるとして、回収時の揚錨はどのような手順で行うのでしょうか。
錨とブイをつないでいるラインはそれによって錨を引き上げられるほど頑強なものとは思えません…。


ご存じのように 「捨錨」 と言いますのは、荒天錨泊中などにおいて緊急で出港する時に錨を揚収する暇が無い場合に錨鎖を切ってそのまま錨と錨鎖を海底に残したままとすることです。 もちろん後でこれを収容しますが、これを「収錨」と言います。

捨錨する必要が出てくることを予期されるような場合には、錨泊した後で 「捨錨準備」 という作業を行います。 その準備が完成した形が次の図のようになります。

shabyou_01.jpg

つまり、錨鎖を一節ずつ繋いでいるケンターシャックルを錨鎖を固定しているスリップの直ぐ後ろ側になるようにし (捨錨準備に関係なく、錨泊時は “船乗りの躾け” として常にそうしています)、外舷に錨鎖を引き揚げるのに十分な強度の鋼索 (ワイヤー) を図のように準備してその一端を錨孔の外側から回してここに仮止めしておきます。 そして鋼索の他端に示錨浮標と浮標索を結んでおきます。

実際の捨錨時には、ケンターシャックルを外して切り離した錨鎖の後端に鋼索を取り付けてから、スリップを外して錨鎖を投入し、順次鋼索を伸ばしていきます。 そして適宜の時期に浮標と浮標索を投げ入れます。

したがって、収錨時にはまず示錨浮標を人力で引き揚げてその浮標索を揚錨機に巻き、あとは浮標索、鋼索、錨鎖の順で機力で巻き上げて行きます。


では、緊急時にこの捨錨準備をしていなかった場合や、何かの理由によって錨鎖が途中で切れてしまった場合はどうするのでしょうか?

この場合は色々なやり方がありますが、下図のように自艦の小錨を使って錨又は錨鎖を引っかける方法や、あるいは短艇などを使って錨の爪に索を引っかける方法などはその例です。 これらを 「探錨」 と言います。

shabyou_02a.jpg  shabyou_02b.jpg

小錨の場合はそのまま引き揚げますが、短艇を使用する場合は、錨が引っかかったらこの索のどちらか一端に順次太い索を繋いで繰り出し、錨を引き揚げるのに十分な強度の麻索又は鋼索となったところで、自艦で錨を引き揚げます。

収錨や探錨は天候や海面状況が良くなったらゆっくりやればよいのですが、捨錨は昼夜を問わず荒天の中での緊急作業になりますので非常な危険を伴い、下手をすると甲板員の足の1本や2本は失うことになりかねません。

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前 : 「錨と錨鎖の話し (8)」

次 :「 錨と錨鎖の話し (9・補)」

posted by 桜と錨 at 18:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 海軍のこと

今週の本家サイトの更新


先週に引き続き先週に引き続き 『射撃指揮装置機構概要』 コーナーを更新し 『各種変化率計出機構』 の頁を追加 しました。


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変距率などをどのような機構でアナログ計算していたのかの解説ですが、もしメカ関係をあまり得意とされなければ、ざっと流し読みされて “ふ〜ん、こんなふうだったのか” をご理解いただければ十分でしょう。

posted by 桜と錨 at 16:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し

2016年05月21日

ソーラー・ランタン


普段から何も手入れをしていない我が家の庭ですが、それでも日が暮れると真っ暗で味気がありません。

そこで近くのホームセンターで安いソーラー充電式のランタンを買ってきて庭木にフックで吊してみました。

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いわゆる照明用のランプではありませんのでそれほど明るくはなく、ボーっと点いている程度です。 おまけにローソクが風で揺れているような点き方をします。

最初は試しで1つでしたが、これでは人魂のようだとの声もあり ・・・・ 3つになり、そして5つになってしまいました。

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まあ、夜中に近所の方々にお見せするような庭でもありませんし、道路からも見えませんので、これくらいの明かりで丁度良いかと (^_^;

で、今日は家内がクリスマスの飾りにつかう小さな電池式のキャンドルを小瓶に入れて一緒に飾りました。 手前の小さなやつがそれです。

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こんな感じで、夏は孫娘とBBQが出来ればいいな〜、っと (^_^)

posted by 桜と錨 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 気ままに

2016年05月15日

ぶらりドライブ


一区切りついてホッとしておりますので、今日は家内とドライブへ。

薄曇りの丁度良い天候で、新緑を眺めながら、いつもよりちょっと足を延ばしてみました。

海岸沿いの国道の脇にある、外観も内装も地方でよく見かけるごく普通〜の店構えのお寿司屋さんです。 店内の窓からはローカルなノンビリした海の景色が。

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2時をちょっと回ったところでしたので割と空いていましたが、それでも入れ替わり立ち替わりお客さんがありました。

で、何でここまで来たかというと、看板メニューのこのお寿司なんです。 ネタはその日の状況により少しずつ違うようです。

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この向きの方がそのボリューム感がよくお判りいただけるでしょう。

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一緒に出てくる小さな包丁を使ってネタを適当な大きさに切りながら食べます。 鯛などは厚さが1センチ以上も。 これに今日は鯛のアラ汁が付いてきました。

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もちろん老夫婦1つずつなどはとても食べきれませんので、天麩羅の盛り合わせを1つ注文して二人でシェア。

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この天麩羅もここの人気メニューの一つで、新鮮なネタをサクサクっと揚げた、なかなかのものです。

もちろん、都心ならお金に糸目をつけなければもっと美味しいものを食べられるでしょうが、値段からも話題性からも、庶民としては全く文句はありません。

実はここ、私はもう15年以上前に一度来たことがあります。 内装が少し変わった以外は昔そのまま。

今回はそのインパクトを楽しみに家内を連れて。 ご馳走になりました〜 (^_^)

posted by 桜と錨 at 20:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 気ままに

本家サイトの久々更新


やっと少し時間がとれるようになりましたので、本家サイトは久々の更新です。

1月で止まっておりました 『旧海軍の砲術』 コーナーの 『射撃指揮装置機構概要』 に新しいコンテンツを追加しました。

今回は測的方式のことと、射撃盤のメカニズムについての第1回目です。


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当時の射撃指揮装置がどの様な理論と方法で計算を行っていたのかを具体例を挙げながらの説明ですので、ちょっとマニアックな内容ですが、こんなことは一般の出版物やネットにはありませんので旧海軍の砲術に関してキチンと残していきたいと思っています。

メカが苦手な方々も、“ふ〜ん、こんなことになっていたんだ” 程度の読み流しで結構ですので、是非一度ご覧下さい。

でも私などからすると、こういう事を知らないままでは、本来なら太平洋戦争における日米両海軍の射撃指揮装置の優劣がどうのこうのなどは語れないと思うのですが ・・・・

posted by 桜と錨 at 10:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 砲術の話し

2016年05月13日

お〜っ、懐かしい写真が


アナポリスの海軍兵学校を紹介している個人運営の 『Naval Academy One』 というサイト、ここにご来訪いただいている皆さんの中にはご存じの方も多いと思います。


非常にマニアックな内容で、じっくり読んでいくといつも思わず “ニヤリ” とさせられる話題が満載です。

で、このところバタバタしておりましたので久しぶりに拝見しましたら、2月の記事の中に懐かしい写真がUPされていました (^_^)


本家サイトの 『砲術への想い』 コーナーの留米中の記事でもご紹介したことのあるものです。

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まあアナポリスについてのサイトとはいえ、よくまあこんな写真を話題の中に上手く使っていただけたものと (^_^;
posted by 桜と錨 at 08:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 気ままに

2016年05月09日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (10・終)


弾道の誤差 (承前)

(3) 速力誤差

ここでいう 「速力」 とは speed、つまり単に早さのことで、方向の要素を含んだ速度 vector のことではありませんのでご注意を。

推進ロケット燃焼終了時における弾道弾の速力の誤差もまた弾着の誤差になることはお判りでしょう。

この速力誤差が生ずると、その後の真空中における楕円軌道が変わり、下図に示すように意図した軌道から長軸を誤差による Δθだけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には2Δθの誤差を生じることになります。

BM_Error_07a.jpg

このことは弾道の “高い” “低い” ということと同じ意味になり、これは次の (4) で説明する仰角誤差よりも更に重要な問題となります。


(4) 仰角誤差

推進ロケット燃焼終了時における弾道の仰角の誤差も弾着時の距離誤差となります。

これも上記の(3)と同じく、意図した軌道から長軸を誤差による Δθ だけ回転させた新しい楕円軌道になり、その結果弾着には 2Δθ の誤差を生じることになります。

BM_Error_07b.jpg

ただし、当初の意図した弾道は所要の射程まで飛翔するに要する最少のエネルギーによるものですから、この仰角誤差は結果的に常に射程の減少となって現れることになります。


弾道誤差の要約

これまでに説明してきた弾道弾の弾道誤差について、一言で言うと、第一段階の推力飛翔において誘導システムはこれらの誤差を補正する、あるいは最小限に抑えるように機能しなければならない、と言うことに尽きます。

つまり、弾道弾が所要の目標範囲内に弾着するためには、推進ロケット燃焼終了時の速度ベクトルを極めて精密にコントロールして、所望の弾道軌跡での飛翔を達成できる必要があると言うことです。

一般的な弾道弾において要求される推進ロケット燃焼終了時の各要素の精度は下表のとおりであり、これを達成し得て初めて99.9%の有効性が発揮可能とされています。

誤差要素要求精度
位置誤差 1/2マイル以下
方位誤差 ±1分以下
速力誤差 1〜2フィート/秒以下
仰角誤差 ±1分以下



地球自転の影響

さて、弾道弾の飛翔技術の基礎について説明してきましたが、最後にもう一つ重要な事項が残っています。

そうです、地球自転の影響の問題です。 射程が長く、飛行秒時も長いので、この問題への対応は弾道弾の飛翔技術としては必須のことです。

しかしながら、この地球自転の影響の問題は既に艦砲射撃の場合について本家サイトの『砲術の話題あれこれ 第7話』として採り上げております。


射表などの細かいことを除けば、基本的な理論については同じですのでそちらをご参照いただくとして、本項では省略することといたしますのでご了承下さい。


終わりに

さる2月に北朝鮮が行った弾道弾発射実験についての報道を機にこの項を進めてきましたが、ここにきて北朝鮮はSLBMやムスダンなど立て続けに打ち上げ実験を行い、そしてそのほぼ全てで失敗しております。

弾道のことや弾頭の再突入のこと以前に、技術的にはまだまだ打ち上げの初期段階さえ満足に完成していない状態であることが判明しました。

米国本土どころか、日本にとっても真の脅威となるような本当の弾道弾の完成はまだ当分先のように思われます。

もちろん連載冒頭に書きましたように、どこに飛んでいくのかわからない、本当に核弾頭の小型化に成功しているのかも判らない、という状況での単なる政治的なプロパガンダやブラフとしては別の話ですが ・・・・

(この項終わり)

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前 : 弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)

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2016年05月08日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (9)


弾道の誤差 (承前)

(2) 位置誤差

もし燃焼終了時の速度ベクトルの誤差が位置だけの誤差であるならば、下図に示すように軌道上の全てのポイントを同じ量だけずらしたものと考えることが出来ます。

BM_Error_04.jpg

したがって、燃焼終了時の位置がΔθだけずれたとするならば、弾着点も又Δθと同じ量だけずれることになります。 このことは先の (1) の方位誤差の現れ方とは異なりますので注意が必要です。

この燃焼終了時の位置誤差は、次の要素の誤差に起因します。

   目標位置データ
   打ち上げ位置
   誘導

もし目標位置データに誤差があるならば、下図のようにその誤差の距離にほぼ等しい弾着誤差となって現れます。

BM_Error_05a.jpg

したがって、目標の正確な地理的位置を知ることが必要であることは論を待たないところでしょう。

例えば強固なICBM発射サイトを破壊するには、ほとんど直撃するに足る精密な位置情報が必要になってきます。

またもし移動式発射台を使用する場合、実際の打ち上げ位置が計算位置から1マイルずれているならば、例え弾道が正確に計算されていたとしても、その弾着点は1マイルずれます。

BM_Error_05b.jpg

これは、艦船、航空機、あるいは潜水艦から弾道弾を発射するためには、精密な航法機器を装備する必要があることを意味します。

更に、誘導システムが適正な位置で推進ロケットの燃焼を終了させることができなければ、これも正確な弾着を得ることができません。

特に垂直位置の誤差はこの誘導装置の不正確さに起因します。

即ち、例え燃焼終了時に意図した速度 V* 及び仰角 φ* を得たとしも、下図のように燃焼終了位置が高すぎた場合、あるいは低すぎた場合には、弾着位置に誤差を生じることになります。

BM_Error_06a.jpg

BM_Error_06b.jpg

この燃焼終了時の高度誤差は、それによる弾着誤差の決定が他の要素のように1対1的に単純に表されるものではなく、より複雑な方法が必要になります。

例えば、意図した弾道で打ち上げたものの推進ロケットの燃焼終了時が早すぎた場合、本来の燃焼終了位置に達した時点での速度が遅くなることになります。

これによって本来の燃焼終了地点以降の弾道は意図したものより短くなり、これが弾着誤差となります。

したがって、目標位置に弾着させるためには、誘導システムによる燃焼終了位置の極めて正確なコントロールが必要であることをお判りいただけるでしょう。

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2016年05月07日

弾道弾の飛翔技術の基礎 (8)


弾道の誤差

しばらく時間が開いてしまいましたが、今回はいよいよ弾道弾の飛翔の誤差、即ち弾道誤差の問題です。 この弾道の誤差はそのまま弾着の誤差に直結することは申し上げるまでもありません。

そして弾道弾が正確に所望の弾道を飛翔するかどうかは、ひとえにその誘導システムの良否にかかってきます。

飛翔第一段階のロケット推進の間に、誘導システムは推進ロケットの燃焼終了時点において弾道弾の速力と方向が所望の速度ベクトルとなるようにコントロールします。

この時に誘導システムが正しく機能しなければ、以後の飛翔において弾道弾の速度ベクトルに次の一つ、あるいはそれ以上の要素の不良を生じることになります。

   方位誤差
   位置誤差
   速力誤差
   仰角誤差

当然のことながら、第二段階の自由飛翔においてはこの燃焼終了時点での速度ベクトルの誤差の全てを引き継ぐことになりますが、この段階中に新たな誤差を生じることはありません、

最後の第三段階の大気圏再突入においては、弾道弾は大気の風及び空気密度の変化によって誤差を生じますが、基本的に (GPS等による誘導機能を有しない限り) これらの再突入時の誤差を修正することはできません。

そして風及び空気密度の変化による弾着誤差は一般的に約1マイル程度以内であるとされています。


(1)方位誤差

方位誤差は、燃焼終了時の速度ベクトル V が意図する弾道軌道面上から外れることにより生じる誤差です。

この誤差は、結果として下図に示すように予期弾着点に対して横方向の距離誤差となって現れることになります。

BM_Error_01.jpg

もちろん地球は平面ではありませんから問題はもう少しややこしく、球面三角法によってこの誤差の方程式を求めると次のようになります。

 a = A x sin 2θ

  a : 横方向距離誤差 (Cross Range Error) (単位 : マイル)
  A : 方位誤差 (単位 : 分)
  θ : 燃焼終了時の本来の弾道方位 (単位:度)

次の図は、この方程式により計算された弾着誤差の一例です。

BM_Error_02.jpg

この方程式によりいくつかの方位誤差について作図すると下図のようになります。

BM_Error_03.jpg

ここで注意していただきたいのは、射程5500マイルのICBMの場合、1度の方位誤差では60マイルの弾着誤差を生じますが、10800マイル (地球周回の約半分) の射程の場合は弾着誤差は0 (ゼロ) になることです。

これは本来の弾道弾の軌跡と誤差による軌跡は共に地球中心を含む垂直面内にあり、地球の大圏の円を横切ることになるためです。

( これは、例えば1/4や1/8などで切り売りされているスイカなどの皮の表面の形を考えていただければこの理屈がお判りになると思います。)

そしてこの図から、弾着時の誤差を1マイル程度とするためには、誘導システムは燃焼終了時の速度ベクトルにおいて方位誤差を ±1分の精度でコントロールする必要があることが判ります。

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2016年05月06日

取り敢えず一区切り


お出かけやら何やらでこの数ヶ月バタバタ続きでしたが、ここに来てやっと一区切りついて一息つけるかというところです。

で、家内と一緒に近くで一休み (^_^)

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しばらくはライフワークにも時間が取れるのか ・・・・ ?

posted by 桜と錨 at 19:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 気ままに